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体験デザインブランディング—コトの時代の、モノの価値の作り方(前編)

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あえて、コアユーザーを外す

アーキセプトシティ 室井淳司氏

室井:「一番搾りフローズン<生>」は、氷のふたで約30分、冷たさがキープできます。ある意味、ビール好きにとっては、いつまでも冷たいビールが飲めるという歓びがありますが、コミュニケーションの戦略は既存のビールファンではなく、20代の社会人男女でした。なぜあえて、ビールを飲まないと言われているこの層を狙ったのですか

門田:確かにビールは、40〜50代の男性に飲用を支えてもらっています。しかし、新しい血を入れていかなければブランドは活性化せず、最終的には縮小してしまいます。ビールカテゴリー全体が停滞しているなかで、シェア争いをするのではなく、カテゴリーを大きくしていくことで、ビールファンを増やしていきたい。だからあえてビールを普段飲まない人たちにターゲットを絞りました。

室井:結果的に「一番搾りフローズンガーデン」は、お客さまの60%を女性が占めるという、これまでのビールシーンではあり得ない景色が生まれました。

門田:男性よりも女性の方が情報発信力もありますし、結果的に女性にブームをつくってもらった感じはあります。通常テレビCMは1カ月で30%の認知獲得まで持っていければ、かなりよい結果だと思いますが、「一番搾りフローズン<生>」は1カ月で60%の認知を獲得できました。これは女性をうまく取り込めたことと、SNSによる情報の拡散力が想定以上に延びたからだと分析しています。

室井:僕が様々な企業のコンセプトショップのお手伝いさせていただいているなかで、ブランドマネージャーの方はバジェットが決まっているコミュニケーション予算をいかに振り分け、何を目標とするか、という戦略のジャッジに頭を悩まされている様に思います。門田さんは、一番搾りフローズンガーデンに、どのような役割をもたせましたか?

門田:ビールを飲む歓びや楽しさを伝えていくということが最も大きな役割ですが、数字的なミッションも持たせていました。「一番搾り」は、全国にユーザーが600万人いますが、例えばこの数字を年間で2〜3%伸ばすのはとても大変なことです。600万人の3%は18万人ですが、仮にこの数字が普段ビールを飲まない人で大半が構成されたとしたら、「一番搾りフローズンガーデン」だけで新たなユーザーを2〜3%増やせたことになります。
まずはこれを数的目標のベンチマークにました。20万人が体験できる施設の場所や規模、国内での展開店舗数等を算出し、その実現可能性をシミュレーションしました。普段ビールを飲まない20代社会人男女にフォーカスしたのも、その理由の一つです。
結果的には40万人弱の方々が来場されました。ですから「一番搾りフローズンガーデン」には、ブランド体験の提供とビールカテゴリー拡大、新たな「一番搾り」ファン取り込み等のミッションを、具体的な数字とともに負わせていました。

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