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不揃い農作物を魅力的にしたデザインの力、赤ちゃんが食べられるくらいに薄皮の『金八みかん』

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個性を表現することで不揃いなみかんを魅力的に

「みかん農家の方と話す中で、形が不揃いのものは流通に乗らずに、ジュースにされたり、破棄されていることに気づきました。これはもったいないなと。そこでもっとみかんに関われることはないかと新たな商品開発に取り組むこととなりました」

それが今のみかんにシールを貼った「みかんず」誕生へとつながるわけだが、その着想はとてもシンプルなものだった。

「一つひとつのみかんをそれぞれの命だと考えた時、人気者となれずに弾かれてしまうのはかわいそうだと思いました。不揃いであっても形が悪くても、それは人間と同じで個性なのです。人間にだって色んな人がいますし、自分の個性をうまく活かしている人はとても魅力的。同じようにみかんもネガティブな要素をポジティブにしてあげれば商品として成立するのではないか。そういった考えから、みかんに顔をつけ、個性をつけるという気軽な発想をもって商品が生まれることとなりました」

2012年にネット上のみで販売がスタート。表情豊かなみかんはお歳暮をはじめとしたギフトの需要に乗り、想定よりも多くの注文を得ることができた。初年度は生産者である農家の方にシール貼りと発送をお願いしていたが、収穫や出荷の忙しい時期と重なり作業が困難となってきたため二年目からは杉山氏と交流のある「あきる野・森のクリーニング屋SILK」にて行なうこととなった。ただ2年目からは更に注文が多くなり、対応にも限界が出てきたという。

顔のシールが貼られた「みかんず」は、通常は市場に出すことができない不揃いのみかんを使用。ギフトの注文が多い。

「今はみかん箱にして200ぐらいを作るのが限界です。注文を11月中旬から受け付け始めて、12月後半で締め切るような形ですね。活動自体は4年目になりますがまだまだ体制が整っていなくて、ネットからの注文は僕自身がやり取りをして商品手配を行っています。そういったことを含めると商売としてはなかなか難しいものがありますね。ではどうしてやっているかというと、やることそのものに意味があると感じるからです。こうして毎年続けていけば消費者の農産物に対する意識も変わってくると思いますし、そこから新たなビジネスチャンスなども展開していくと思っています」

「みかんず」のネーミングには「未完成図」という意味も込められている。果物や野菜は味や品質に問題なくともサイズが揃っていないだけでランクが落ちてしまう面がある。デザインの力によって、それら不揃いなものに通常と変わらないような輝きを持たせるこの試み。杉山氏の言うように「魅力的な個性」を表現できているからに他ならない。

みかんだけでなく、梅干しやはちみつなど、農作物や加工食品のブランディングも行う。

 


杉山 紘一(すぎやま・こういち)
MARUアートディレクター グラフィックデザイナー

1981年香川県生まれ。2013年MARU 設立。日本グラフィックデザイナー協会会員。主な受賞にpentawards 金賞/ 銀賞/ 銅賞、日本パッケージデザイン大賞銀賞/ 銅賞、グッドデザイン賞、NY TDC 入選、JAGDA 新人賞ノミネート、ADC、TDC など多数入選。