コラム

箭内さん!聞かせてください。今日このごろと、広告のこれから。

箭内さん!どうして今、ラジオなんですか?

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—地域、ローカルに特化することには、どんな意味や可能性があるのですか?

昔と今を比べるとき、当然インターネットの存在は甚大です。今は、地方で起きたことが地方で完結しなくなった。ある地域で起こった新しい試みが、その日のうちに全国に伝わって、それがロールモデルになり、遠く離れた別の地域・コミュニティを変えていくことができる–そんな時代。必ずしも東京が中心ではなくなった。「目指せ、ミニ東京!」だけではなくなっているのです。

5年ほど前、長崎市長と話したときに「箭内さん、長崎を盛り上げることを何か考えてくれませんか」と言われたことがありました。以前だったら、「僕は福島県出身で、福島のことしか分からないから、長崎のことはきっとできません」と答えたと思うのだけど、今は完全に、「長崎で新しいことをする」イコール「全国に新しい提案をする」なんですよね。そのことを強く感じます。

とりわけ渋谷は、日本の先頭を走っている、誰もが注目するような大きな実験ができる場所。僕が2003年に博報堂を辞めて、風とロックの事務所をつくってから、12年間お世話になっている原宿も渋谷区です。コミュニティFMをここにつくるというのは、必然でした。

—なるほど。なぜ渋谷なのか?も疑問のひとつでした。ロールモデルをつくるにあたって、一番分かりやすいというか、起爆力・影響力があるのが渋谷区ということなんですね。

そうですね。もともとラジオが大好きだということに加えて、東日本大震災をきっかけにメディアとしてのラジオの復権が見られたり、インターネット時代にあってラジオが持つ1対1の力が再評価されたりといった流れもあって、「ラジオしかない」と最初から思ってはいましたが、今やろうとしていることは「ラジオ」に留まらない、街づくり。そのロールモデルづくりです。

—例えば箭内さんの故郷である福島のどこかの街で、コミュニティFMを開局するという案はなかったのですか?

僕の中にはありました。福島はもちろん自分の故郷だってこともあるし、それこそ地元局のラジオ福島では月1回、公開生放送『風とロック CARAVAN福島』という番組のパーソナリティをしています。福島県内の全59市町村を5年かけて巡っていくというもので、これまでに23カ所を回っています。2時間の生番組のうち、前半は地元の人たちと僕が話す構成なのですが、そこでやっぱり、ローカルには本当に面白い人や動きがたくさんあって、「ローカルこそがグローバルだな」と実感した。

そんな折に、渋谷区の商店会の人たちと出会ったわけです。2020年という節目に向けて、新しい日本のロールモデルをつくっていく場所として、渋谷でやる必要があると思いました。

すでに福島には、素晴らしいコミュニティFMがあります。渋谷にはそれがなく、待望されていた。その意味でも、「渋谷のラジオ」の開局は急務でした。

—今回、最後の質問です。箭内さんがこれまで広告で培ってきた力が、この「渋谷のラジオ」にはどう活きてくるのでしょうか?『月刊 風とロック』はアーティストの広告、野外フェス『LIVE福島』は福島の広告、MCを務めたNHK『トップランナー』はゲストの魅力を伝える広告……ご自身の活動は、形は違えどすべて広告なんだと箭内さんはおっしゃいますが、今回のラジオは?

「渋谷の広告」であり、「ラジオの広告」ですよね。

ラジオには、まだまだ無限の可能性があるっていうことを、これから広く告げていくわけです。先ほど「ラジオに留まらない」と言ったのは、渋谷に暮らす人、渋谷に集まる人、そして渋谷の商店会5000店舗と連携した動きを含めて、「ラジオ番組」の枠を超えた取り組みを考えているということです。

福山さんや谷村さんといった、有名な人がたくさん参加してくれようとしているから、一見、既存の民放局の縮小版のように思われるかもしれませんが、まったく別のものをつくっていると思っています。言ってみれば、渋谷に縁のある人たちが、たまたま有名な人だったというだけ。ほかにも、地元のスター、例えば消防団団長の間野敬昭さんや、ボーリング場「笹塚ボウル」の財津宜史専務、初台地区町会連合会の名物会長である今井貞子さんなどにパーソナリティを務めてもらいながら、その人たちの溢れる魅力を広告していきたいと思っています。「人間」の広告であり、それはすなわち、全国に数多ある「地域」というものの広告になる。そこに生きる人たちの活き活きした姿や知恵が、「渋谷のラジオ」のメインコンテンツであり、主人公です。

『広告の明日』が見えるキーワード

「納得性」と「疑問性」。

「なるほど!」と「なぜだ?」、その両方がそこにある状態から新しいものが生まれる。



箭内道彦(やない・みちひこ)
1964年 福島県郡山市生まれ。博報堂を経て、2003年「風とロック」設立。タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」リクルート「ゼクシィ」をはじめ、既成の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がける。また、若者に絶大な人気を誇るフリーペーパー「月刊 風とロック」の発行、故郷・福島でのイベントプロデュース、テレビやラジオのパーソナリティ、そして2011年大晦日のNHK紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストなど、多岐に渡る活動によって、広告の可能性を常に拡げ続けている。東京藝術大学非常勤講師、青山学院大学非常勤講師、秋田公立美術大学客員教授、福島県クリエイティブディレクター、郡山市音楽文化アドバイザーなども務める。

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