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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

西川美和×谷山雅計×福里真一「コピーライターと映画監督が語る、アイデアを生む“脳の動かし方”」【後編】

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谷山さん→西川さん
「映画のラストシーンはどうやって考えるのですか?」

福里:谷山さんからの質問です。「すごく失礼な言い方かもしれませんが、西川さんはひらめき以上に思考量で勝負しているタイプの方に思い、僕も同じタイプだと勝手にシンパシーを感じているのですが、その見方は正しいでしょうか」。

西川:私は全然ひらめかないし集中力もありません。机について自分を追い詰めないと筆が進まないんです。私もファンタジスタでないことは明らかです。

福里:西川さんのクリエイティブの中心には、やはり脚本がある感じですか?

西川:あまり自分にビジュアルの才能を感じたことはないんです。どちらかというと言葉で思考を積み上げていくタイプで、書くことで自分が何をやりたいかがわかってきたり、物語が見えてきたりするので、やっぱり脚本を書くことが自分の仕事の中心にあると思います。

谷山:とはいえ印象的なシーンも多い。福里さんも確か自分のCMで西川さんの映画を…?

福里:ダイハツの第三のエコカーのCMで瑛太さんが地元にアメ車で来るシーンは、『ゆれる』のオダギリジョーさんの帰省のシーンを参考にさせていただきまして。

西川:ああ!いいCMだなって、思ってました(笑)。

谷山:とはいえ僕は『ゆれる』のラストシーンのビジュアルがものすごく好きです。

福里:あれもシーンから発想するのではなくて、設定から生まれたんですか?

西川:木に例えると、葉っぱの先端から思いつくこともあります。『ゆれる』のラストもポンと思いついて、そこに最後行きつくにはどうしたらいいかと、幹と葉っぱの間の枝葉を長い時間かけて埋めるようにつくっていきました。

福里:では、最後に。「映画の終わらせ方について。西川さんの作品は、映画のストーリーとして一応の終わりはあっても、どれも人生の続きを強く感じさせるものが多い。広告とは尺の長さがあまりに違って参考にはしにくいのですが、そのあたりの話を」。

西川:私が扱うテーマは、「最後はみんなが仲直りして幸せになったらハッピー!」とシンプルに片付けるわけにはいかないレベルで本編をこじらせてしまっていますし、私自身も「え、ここで終わりなの?」というラストが好きなんです。シドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』とか『狼たちの午後』のように、人生を丸く収めずに分断されて終わる方が、より生々しく生きられると思っているところがあって、影響されているのかもしれません。

福里:ここで質問は終わりです。谷山さん、もう『永い言い訳』のコピーはできているんでしたっけ?

谷川:まだプレゼンしている最中です。西川さんの映画はコピーを考えるのは難しいんですよ。

西川:そこを何とか、とお願いしまして。谷山さんからは、映画の人間からは絶対に出ないフレーズが出てくるので。

谷川:ホームドラマなのか、ラブストーリーなのか、西川さんの映画を自分なりに3秒に要約してみたりあおってみたり…。短く言うのが難しいんですよね。

福里:一言で言い当てられないから、映画にしているわけですからね。西川さん、今日の感想はいかがでしたか?

西川:映画と広告は同じように映像や言葉をつくっているのに、交流や才能の交換ができていないなと思っていたので、今日は自分とは全然違うアイデアの出し方や思考法を谷山さんと福里さんにお聞きできて、とてもいい時間でした。ありがとうございました。

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西川美和(にしかわ・みわ)
映画監督

1974年広島県生まれ。大学在学中より『ワンダフルライフ』(是枝裕和監督)にスタッフとして参加。2002年『蛇イチゴ』で脚本・監督デビュー。以降『ゆれる』(2006年)、『ディア・ドクター』(2009年)、『夢売るふたり』(2012年)などの長編映画はいずれも本人原作からのオリジナル作品。小説作品に『ゆれる』『きのうの神さま』(いずれもポプラ社)、『その日東京駅五時二十五分発』(新潮社)、『永い言い訳』(文藝春秋)。エッセー集として『映画にまつわるXについて』(実業之日本社)がある。2013年、制作者集団・分福の設立に参加。長編最新作『永い言い訳』(本木雅弘主演)は10月14日より公開決定。

 

谷山雅計(たにやま・まさかず)
コピーライター、クリエーティブディレクター

1961年大阪府生まれ。84年博報堂入社。97年に独立して谷山広告を設立。主な仕事に東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、資生堂「TSUBAKI」「UNO FOGBAR」、新潮文庫「Yonda?」、日本テレビ「日テレ営業中」、東洋水産「マルちゃん正麺」、日本郵便「年賀状」、サイボウズ「働くお母さん応援Webムービー」など。著書に『広告コピーってこう書くんだ!読本』『広告コピーってこう書くんだ!相談室(袋とじつき)』(いずれも宣伝会議刊)。

 

福里真一(ふくさと・しんいち)
ワンスカイ CMプランナー、コピーライター

1968年鎌倉生まれ。1992年電通入社。2001年からワンスカイ所属。今までに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、ジョージア「明日があるさ」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN」「TOYOTOWN」、ダイハツ工業「日本のどこかで」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」、アフラック「ブラックスワン」、ゆうパック「バカまじめな男」など。著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)、『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)。