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人々を動かすプロモーション戦略の裏側を探る — 赤城乳業×日本HP

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キャンペーンとイメージが対極の女優にインフルエンサーを依頼

—Webの活用によって商品が売れた事例はありますか?

日本HP パーソナルシステムズ事業本部 パーソナルシステムズ・マーケティング部 部長
甲斐 博一 氏

甲斐:商品が売れるかどうかは時代によって変化する、お客さまの欲しいものを作れるかどうか、にかかっています。ソーシャルの時代は、顧客とダイレクトにコミュニケーションができますから、変化をいち早く製品設計側にフィードバックすることが大切だと思います。

グローバル展開と日本独自の取り組みを組み合わせて実施した“スターウォーズキャンペーン”では、若年層の取り込みを強くするために、ソーシャルとWebでのプレゼンスを大きく取り、TVは補完メディアとしました。日本ならではの企画として、ソーシャルでANAとキリンのコラボレーションを仕掛けました。

ある日、当社の受付がチューバッカになり、翌日ANAの受付がレイア姫に、キリンの受付にはBB8が現われるといったことに始まって、当社でANAのサービスを、キリンで当社のPCを紹介するといったモーメンタムを生み出しました。これは海外向けのプレゼンでも高評価を受けました。

当社のような高額でありながらコモディティ化された商材の場合、施策がデマンドジェネレーションに寄りすぎると価格訴求が行き過ぎてしまいます。消費者との心理的なつながりにも注目し、中長期的に育てていくブランドと、短期的に刈り取っていくものをどうバランスしていくか、日々考えて取り組んでいます。

萩原:当社でいうと、モンスターハンターやスターウォーズとのコラボのほか、北海道限定の飲料「リボンナポリン」のアイスをガリガリ君の公認ライバルとして発売したところ、なんとガリガリ君ソーダの約2倍の売上を達成しました。ガリガリ君梨味は、2010年、2011年の欠品を受け、2012年に「今年こそ『まぼろしとは言わせない』」と称して季節限定発売したところ、ツイートのランキングにて1位を獲得、2010年比約5倍の売上を記録しました。

中でも最大のニュースはガリガリ君コーンポタージュ味の発売だと思います。Yahoo!のトップに7回、ツイッター、Facebookの拡散でも第1位を獲り、TVでも数多く報道されました。ニュースリリースに150000円ほどしかかけずに、550,000,000円の露出効果を生んだのです。

……というように、好調な話ばかりしてきましたが、その後にシチュー味、とどめにナポリタン味で3億円の大赤字を出した、と言うとんでもないオチがあります。また、その後値上げに踏み切るのですが、実は3億円も赤字を出してしまったのだから値上げをしようという伏線をテレビで張ったという経緯もあります。とは言っても、お客さまに値上げの要因を正直に伝えようと考えていたので、メディア取材はすべて受け、テレビCMと日経新聞の1面に広告を出しました。

「なんで日経の1面に出したのか」とよく聞かれるのですが、実はガリガリ君のヘビーユーザーは日経読者と重なるんです。10年前に課題だった層を取り込めた成果ともいえると思います。ガリガリ君値上げに関するテレビCMは、最終的にニューヨーク・タイムズ誌の1面に掲載されるまでになりました。時間とともにガリガリ君に興味、理解、共感が深まっていった結果と受け止めています。

—プロモーションの成果を見るということについて、どのように考えていますか。

甲斐:効果測定の考え方をお話しすると、BtoC、BtoB双方のマーケティングを行う中で、最近はネットプロモーターをどう作り出すかに重点を置き、ソーシャル重視の活動を行っています。また、BtoBのほうでは業界を超えて顧客との関係を築きながら案件発掘からその案件を育てあげていくリードナーチャリングがそのテクノロジーの進化とともに盛んであり、これは施策結果を計測し、ROIを算出することはわりと普通にできるようになりました。一方でBtoCのほうを見るとWeb広告の世界では99%の人はクリックしません。これらの人をどう育てていくかに重点を置いています。フルークエンシー効果がどれだけ売り上げに影響を与えるか、オンラインとオフラインでのアトリビューションを統合的に捉えることができるか、などにチャレンジしています。

日々の訓練をどれだけ粘り強く続けられるか

—話題化を図るために、必要なスキルはどのようなことだとお考えですか。

萩原:情報の幅ですね。くだらないネタから、新聞の情報まで、情報収集を毎日クセにしてしまうと、非常に楽になると思います。訓練の中で、動線がイメージできるようになりますよ。ここで失敗しても伏線としてネタにできるなって。そうやりながら、ガリガリ君に関しては12年かけて、今の空気感を作れたと思っています。どれだけ粘り強くそういったことが続けられるかと言うのが私にとっての必要なスキルかなと思っています。

甲斐:私は3つあります。1つは、今やマーケターとしての絶対的な条件でもあるデジタルに対する理解。そして2つ目はそれが全体に対してどれくらいを占めているかを設計できるスキルとセンス。最後は海外、アジアの中のほかの国々と日本の違いをきちんと認識し、その中で日本の特異性を説明できるかです。スキルというよりは人材という観点ですが、最終的にはアジアの成長国が成熟国になったときに、リファレンスケースとして日本で今やっていることがちゃんと展開できるような、そんなグローバルで活躍できる人材こそ、私は今必要だと思います。