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Webメディアの新作法 編集者の現場はここまできている! 新しい技術・手法(前編)

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デジ一眼でなく「写ルンです」で撮影することが主流に?

フィルムカメラの中でも、「写ルンです」の「写り」はかなり特徴的です。

被写体:OTOGIBANASHI’S in-d
撮影:torumiyamon1987

標準モデルとなる「シンプルエース」はF10 1/140 ISO400 で固定されていて、うす曇りの日中がちょうど良いくらいの設定となっています。つまり、室内、夜間、日中でも暗ければフラッシュを多用せざるを得ない。おまけに1メートル〜無制限の被写体を撮影する「パンフォーカス」なので、近接だとピントがぴったりあいにくく、フラッシュも1メートル先の人物を撮影するぐらいの出力(光量)となっているため、それより遠い背景にまで光が届かず、暗所などでは人物がぼーっと浮かび上がるような効果があります。

この「人物が浮かび上がるようなライティング」と「パンフォーカスならではのボケ」具合が、ポートレイトやスナップ写真の場合、肩肘張らないオチ感というか、得も言われぬイイ味を醸し出してくれるわけです。さらにナチュラルな周辺光量落ち(写真の四隅が暗くなる)も、クリアなデジカメ写真にはない、被写体へ迫っていくような効果があります。

要はInstagramのフィルターに近いテイストなんですが、それがなんの画像処理もなく簡単に手に入るのが、20代の連中の“「写ルンです」最強説”につながっているような気がします。若者にとって「写ルンです」は、ノスタルジーではなくて、きわめて個性的な写真が簡単に取れて、写真屋にもっていけばプリントとデジタルデータの両方が手に入る、便利きわまりない最新ギアみたいなものなのかも。

ここ数年のアナログレコードやカセットテープ人気に、その有り様は極めて近い。

ちなみにSILLYの場合、他メディアとの差別化としてテキスト以上にビジュアルを重要視しているので、写真は主に雑誌で活躍するプロのカメラマンをブッキングするようにしていますが、それでも編集者が撮影せざるを得ないという状況の場合は、なるべくデジ一眼でなく、「写ルンです」で撮影することを薦めています(その逆で、プロのカメラマンにあえて「写ルンです」で撮影してもらうトライアルも進行中。20代女子の間では、すでに奥山由之さんをはじめ「写ルンです」で撮影するプロカメラマンが人気)。

下記の記事は、生まれてはじめて記事を書いた新人記者が、生まれてはじめて記事用の写真を「写ルンです」で撮ったもの。かなりチャレンジングな取材でしたが、サイト全体を見渡せばこうしたフィルム的な質感が、SILLYのビジュアル面でのトンマナにつながっていることがわかってもらえるはずです。

「楽しめることを仕掛けていく」THE OTOGIBANASHI’Sのin-dと語らう

ちなみにこの記事で、クリエイターとしても高く評価されているHIP HOPクルー、THE OTOGIBANASHI’Sを「写ルンです」で撮影したtorumiyamon1987のコメント。

「もともと、フィルムが好きってのがあるんですが、iPhoneやデジカメとかに比べるとボケ感が出て、それが写真の個性になるのが好きですね。あと、撮り終えるまで、どんな写真になってるか分からないってのが良いです」

この記事のお手本となるような回答!!メディアを運営しているみなさんもぜひ一度、フィルム写真の導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか?

執筆協力:井上 圭佑 
※1枚目のフィルムカメラCONTAXは、カメラマン大田浩樹氏所有。

後編はこちら