インターナルの成功例にマーケティング施策のヒントあり
Q:インターナル・コミュニケーション部門が新設されたのも象徴的です。最近、インターナル・コミュニケーションを重視している企業が増えていると感じていたところです。
冨岡:今、インターナル・コミュニケーションは、企業のコミュニケーション上の大きな課題のひとつとして常に挙がってくるテーマです。従業員の方々にどうやって同じ方向を向き、同じベクトルで動いてもらうか、それに企業は必死。悩んでいる企業トップは多いと思います。
本田:インターナル・コミュニケーションはターゲットが社員なので、大企業でも数万人相手。普通だったら、数百とか数十を相手にしたコミュニケーションなので、何百万というステークホルダーを対象にしたコーポレート・コミュニケーションやマーケティング・コミュニケーションに比べると、クリエイティビティやダイナミズムが「ない」という印象を持っている人もいるかもしれません。
でも、PRとかコミュニケーションの仕事って、まずは「目の前の一人」を動かしてみなさい、っていう話ですよね。自社の従業員を動かせないのに、消費者や他のたくさんのステークホルダーを動かそうなんて、実はおこがましい話だと思うんです。インターナル・コミュニケーションを成功させるノウハウやクリエイティビティって、すごく大事ですし、とてもプロフェッショナルな視点が必要だと思います。
冨岡:そのとおりですね。
本田:私は、どちらかというとマーケティング・コミュニケーションに軸足を置くことが多いのですが、インターナル・コミュニケーションとマーケティング・コミュニケーションのノウハウって、今後、どんどん溶け合っていくと思っています。マーケティング領域においても、いきなり何十万人から何百万人をマスで動かす時代じゃなくなってくるのは周知の事実です。
今、有効なやり方としては、ブランドにロイヤリティの高い、例えば1000人くらいのグループを見つけ出して、まずそのコミュニティをどう動かすか。次にその1000人をアンバサダーにして増幅を狙い、最終的に何十万人とか、何百万人という規模に持っていく、というのがPRに限らずマーケティングの次世代的な発想だと思います。となると、限られた人数の社員のロイヤリティを高める、インターナルの発想に近いですよね。
冨岡:ロイヤリティの高い従業員は、企業にとって一番のエバンジェリスト(伝道師)です。インターナルでも、マーケティングでも、根幹の部分の関連性が高まってますよね。
本田:インターナル・コミュニケーションの成功例が、マーケティング・コミュニケーションの参考になる時代だと思います。
Q:インターナル・コミュニケーションの分野は、いわゆる広報部以外の方も応募しやすいですね。
冨岡:総務や人事、経営企画やCSRなど、広報担当に限らず、みなさんに応募していただきたいです。
本田:PRの賞と聞くと、テレビで取り上げられるくらいインパクトがないとダメなんじゃないか、って思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。給与制度や教育制度をこう変えた、というのも立派なインターナル施策ですし、その活動そのものが、企業が今後どういうことを目指していくのかというメッセージになります。
冨岡:しかも、インターナル施策の成果に広告換算値が登場することは、ほぼないといっていいでしょう。課題に対して社内がどう変わったか、社員がどう動いたか、に尽きるわけです。
本田:広告換算値が介在する余地がない分、ある意味、指標が健全かもしれないですね。
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