コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

松尾先生、人工知能と広告の未来はどっちですか?【前編】

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AIが言葉を理解する

松尾:人工知能は「言語理解」も少しずつできるようになっています。例えば、画像を入れると文が出てきたり、文を画像で表現したりするテクノロジーも出てきています。

このテクノロジーは翻訳に応用できます。これまでの翻訳は統計的言語処理で、意味を理解していない翻訳でした。しかし画像を介した翻訳は、意味が分かった翻訳になります。つい最近、グーグル翻訳がディープラーニング版に替わり、精度が大幅に向上しました。今では論文をグーグル翻訳に入れると、ほぼ意味が分かるほどです。

これらが可能になった背景には、画像認識という「目」が人工知能に誕生したからです。目が見えると、農業、建設、食品加工など、基本的に人間が目で見て作業をしていたことを、ロボットや機械ができるようになります。

例えばトマトを収穫する際に、ロボットが「いいトマト」と「そうでないトマト」を見分けることができるようになりました。ロボットを使えば、大幅なコストダウンになりますし、病気の判定もできます。さらに進化すれば、ほぼ100%機械化されたトマト農場を、そのまま海外に輸出することもできます。

目のある機械を、ありとあらゆる産業に導入して、サービス化、プラットフォーム化して海外展開すれば、大きな産業分野が生まれるはずです。

ただし今後、ディープラーニングの技術自体はコモディティー化していきます。そうなると、最終的に競争力を持つのは「データとハードウエア」です。ハードウエアは日本の得意分野ですから、欧米企業がなかなか追いつけない。ものづくりを基点に、ディープラーニング技術を活用したプラットフォームのグローバル展開を進めていけば、日本は優位な立場を構築できると思います。

同時に人工知能の活用にあたっては、社会全体での議論も必要です。車の自動運転で大勢の人への危険を回避するために一人を犠牲にするといった「トロッコ問題」をどう考えるのか、軍事への応用を国際社会でどう考えていくのか、知財や権利に関する議論も必要でしょう。

われわれ人間は、人工知能にどのような目的を与えて、どのような社会をつくっていきたいのか、社会全体で議論していく必要があります。

並河:ありがとうございます。松尾先生には、広告会社が人工知能をどのように活用していけばいいのかについても、後ほど詳しく伺いたいと思います。

電通報でも記事を掲載中です。


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松尾豊

1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年から、産業技術総合研究所研究員。05年10月からスタンフォード大学客員研究員を経て、07年から、東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。14年から、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻グルーバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(02年)、創立20周年記念事業賞(06年)、現場イノベーション賞(11年)、功労賞(13年)の各賞を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、10年から副編集委員長、12年から編集委員長・理事。14年より倫理委員長。日本のトップクラスの人工知能研究者の一人。

 

並河進
電通ビジネス統括局
コピーライター、クリエーティブディレクター

2016年9月、データとクリエーティビティーの掛け合わせによるプランニングチーム「アドバンスト・クリエーティブ・センター」を立ち上げる。2016年度グッドデザイン賞審査委員。TEDxTokyo Teachers2015スピーカー。著書に、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)、『Communication Shift「モノを売る」から「社会をよくする」コミュニケーションへ』(羽鳥書店)他多数。東京工芸大学非常勤講師。

 

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