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コラム

椎木里佳の「JCJKの生態と欲望」研究所

雑誌『Popteen』ヒットの鍵は?若者が夢中になる「ゆらちょぱるん」の仕掛け

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「ゆらちょぱるん」ってなんだ?

「ゆらちょぱるん」とは、『Popteen』が誇る3大モデル、「ゆらゆら」「みちょぱ」「にこるん」3人の総称です。

ピンと来ない方のためにもう少し補足すると「ゆめかわいい」というファンシーな世界観を体現した“ゆらゆら”こと越智ゆらのさん。そして独自のギャル路線を追求する“みちょぱ”こと池田美優さん。そしてテレビでも大活躍の”にこるん”こと藤田ニコルさん。この「ゆらちょぱるん」が表紙に登場することで雑誌の売れ行きがグンと伸びるそうです。(Popteen 公式サイト

このSNS全盛の時代に、もちろん彼女たちは各種SNSを使って情報発信を熱心に行い、熱狂的なファンがついています。そしてモデルの彼女たちがSNSで獲得した熱狂的なファンが、雑誌も買ってくれるという新しい循環が生まれています。

かつての雑誌とモデルの関係は、雑誌からモデルが人気になり、その人気がその他の媒体にも波及していく、という流れでした。その流れが『Popteen』ではSNSで人気の○○ちゃんが出ているから雑誌を買う、というSNS時代にマッチした新しい購買動機を生み出しています。

また、『Popteen』の編集部はSNSを頻繁にチェックし、情報発信を自ら行っていて目立っている女の子がいれば、例え素人でも誌面に登場させるという仕掛けも夢を持ったティーンたちに支持される理由になっています。

しかし、ただ「インフルエンサーを雑誌に起用した」ということなら、ここまでのムーブメントにはなっていなかったのではと思っています。『Popteen』の誌面では“読者の交差点”が作られています。

例えば「ゆらゆら」ファンの読者が誌面を見て、ファッションを勉強していると自然と「にこるん」や「みちょぱ」のファンになれるような仕掛け作りが行われています。調べてみるとわかりますが、この3名の『Popteen』の看板ともいえるファッションにはほとんど共通点はありません。ギャルだったり、ゆめかわだったり、時には表紙に渡辺直美さんが登場したり……。まさに混沌としている“原宿そのもの”が凝縮されています。

そのため、自分に興味がないファッションでも意識せずにページをめくるうちに気づくと色んなモデルのファッションを目にするようになる。かつて渋谷を席巻したギャル文化のような「大きな流行を生み出す」というメディアよりも、多様化するニーズを拾い上げ、原宿の町を歩いているときのような“ワクワク感”を誌面で再現する。そこに『Popteen』の編集のすごみがあると思います。
 
80sファッションが個性的なカリスマ・ぺこさんが印象的な話をしていました。それは「私は流行を追わない」と言っていたんです。あれほどファッションに敏感な人からそんな言葉が聞かれたのは正直意外でした。流行を追わなくても自分が「いい」と思ったものを届けたい。もはや最先端に「いなくてもいい」んです。

一方で、1996年に創刊され、原宿のストリートファッションをスナップで伝えてきた雑誌『FRUiTs」が、昨年末休刊になった。かつて原宿ストリートの重鎮と呼ばれた青木正一氏が原宿にいる個性的なファッションの若者を撮影してきた『FRUiTs』の休刊の理由は、「オシャレな子が撮れなくなったこと」とあげています。

ここ数年で渋谷から原宿に移り変わってきたティーンのファッションの聖地は、時代に合わせて常に変動しています。いまは原宿に集まっているトレンドも、数年経てばまた他の場所に移り変わる可能性もあるのではないでしょうか。