【前回のコラム】「私を変えた凄い人たち — 3人目 岡康道さん」はこちら
4人目は、Tham Khai Mengさん(以後、カイ)。
現在、NYに本社のある広告会社Ogilvy & Mather(以後、オグルヴィ)のWorldwide Chief Creative Officerであり、Co-Chairmanです。
つまり、全世界のオグルヴィのクリエイティブのトップであり、共同会長でもあります。アジア人で初めて、ワールドワイドエージェンシーのクリエイティブのトップに立った偉大な人です。
今後、アジア人からも世界の広告会社のトップに立つ人は出てくるでしょう。でも、何でも一番最初にやった人が、一番難しいのです。
広告界に新たな歴史をつくり、アジアの広告界の若者に大きな希望をつくったのが、カイです。
電通からオグルヴィに転職した数ヶ月後、私は、カイ主催のアジア太平洋地域のCD(クリエイティブ・ディレクター)会議に呼ばれました。当時のカイは、アジア太平洋地域のクリエイティブのトップでした。
そこでは、各国が制作した代表的な広告をその国の代表CDが発表し、
互いに刺激を与え、各国が抱えている制作環境の問題を共有し、解決するために意見を出し合うのです。
驚きました。
発表は、限界まで膨らんだ風船のように張り詰めた空気の中で進むのです。
司会者でもあるカイのコメントが、容赦ないのです。
素晴らしい広告の時は、心の底から褒めてくれますが、
駄作を見せると、コテンパンに叩かれるのです。
その時、CDがその仕事の事情などを言い訳しようものなら、
火に油を注ぐことになります。
ある年の会議では、初めて参加したCDが、その洗礼を喰らい泣き出したくらいです。
パワハラかというと、決してそんな低次元なものではありません。
「こんなアイデア、クオリティのレベルで満足してはダメだ」
「なぜ、新しい表現に挑戦しようしないのか」
「クリエイティブのリーダーとして、志をもっと高く持て」
ということを、いろんな言い方でカイは伝えていました。
一方で、日本とは異なり、国の経済が右肩上がりで、
広告クリエイティブの仕事が社会の中で高い地位にあり、CDが尊敬される職種であることから、彼らは日頃の立場とのギャップに戸惑っていました。