テレビCMには許されていて、SNSでは許されないこととは?
メディアの主流がテレビからWebへと時代が移り、10代がとらえる広告の印象が変わってきました。
この連載は広告業界の方や近しい業界の方が読んでくださっていると思うので、今更感もあると思いますが、今までTVCMは「これは広告である」ということが大前提にありました。番組と番組の間にあるCMは、企業PRの時間である、と視聴者は割り切っていましたよね。
対してWebにはそれがありません。コンテンツの切れ目を、コンテンツ提供側が作り出すのではなく、ユーザー自身で選べる仕様となっている。だからこそ、コンテンツの延長線上のような、あえて「広告らしさ」が消された施策も多く見られます。それ自体は悪いことではないと思います。ただ、「広告かどうか」を隠してしまっている状態、極端にいうと「嘘」が存在するからこそ、そのステルス性に気づいた際に拒否反応を示す10代がものすごく多いのだと思います。
さらにいうと、テレビで商品CMに出ることと、自身のTwitterで商品を紹介すること、商品のPRという面だけ見ると根本的な相違はないと思われます。でも、若者たちはテレビが「広告前提」のメディアであると認識しているのに対して、SNSは「自身のパーソナルを発信する、パーソナルで管理できる」場であると認識している。そこに「個人の時間」を侵害する“広告”が入ってくると、とたんに冷めてしまうのではないかと感じています。
Webを日常的に使用する、デジタルネイティブの世代はその感覚も敏感です。テレビと違い、あらゆる局面でコマーシャルを打ち込めるネットでは、広告自体の種類も増えてきています。
スマホの画面をスクロールをする度に広告バナーがついてくるものや、全画面に広告が表示されるものなど、様々な種類のネット広告が日々生まれており、その印象からJCJKの間では「広告=しつこい」というイメージになっていいる側面もあります。
最近では「広告ブロッカー」という広告をブロックできるアプリが「アップルストア・ランキング」で上位になるなど、その傾向が顕著に表れています。若者が広告をブロックする現象は海外で顕著ですが、日本でもその兆候は現れています。海外でのネットに関する調査レポートでは、現代の10代・20代の若者たちは93%がアドブロックの使用を検討しているとの結果が出ています。(出展・UNRULY)
コンテンツのクオリティさえ高ければ、広告だろうと関係ない
今回の『魔女の宅急便』に関してもいることですが、それが広告であろうと、やはり10代が重視しているのは「内容のクオリティ」です。反対に言えば、ある一定のクオリティや「条件」さえ確保すれば、それを広げるのは難しいことではありません。
最近だと大塚製薬「ポカリスエット」のCMがとても人気になりました。高校生の男女が、プールで踊るCMです。“踊ってみた”といった動画を撮影して真似るなど、拡散されていきました。
その要因として、ダンスの難易度が高かったことが真っ先に挙げられます。もしダンスのレベルが低かったとしたら、ここまで流行していなかったでしょう。クオリティが高いからこそ実際に頑張って踊りたくなる、人に見てもらいたくなる、周囲を巻き込んで、踊って、動画サイトに投稿する。
ダンスのレッスンビデオも公式に配信されるなど、「体験」に結びつける工夫も施されていました。10代は「モノ」よりも、周囲と共有できる「体験」にこそ価値を見いだす傾向があります。コマーシャルを見ているだけではなく、そのクオリティに圧巻されつつ、そこに参加して、体験できる。10代特有の感覚をくすぐる仕組みが、そこかしこに散りばめられていました。
このコマーシャルは、テレビCMはもちろん、YouTubeなどのウェブ広告としても流れていました。媒体によって、CMへの共感の差異はありません。どちらでリーチした10代も、きちんと引き込むことに成功しています。クオリティの高いものを作れば、それが広告であろうと関係ない。それが、10代のリアルな感覚です。「個人の時間をじゃましないこと」「コンテンツとしての面白さ」「いかに人と共有出来る体験と結びつけるか」という点が、今後10代をターゲットにした広告における、重要なポイントとなるでしょう。
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