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コラム

クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 

Brexit問題がアムステルダムのクリエイティブ産業を活性化する?

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クリエイターのエコシステムをバックアップする優れた制度やシェアオフィス環境

アムステルダム市内に増えるシェアオフィスの様子。

ここで、今回はもうお1方、アムスルダム市の組織で同じように企業誘致を担当している「アムステルダムインビジネス」のシニアマネージャーで、ジャパンデスクチーフのリクート・ジュリアンさんにもお話を聞いてみました。

「アムステルダムはイギリス、特にロンドンと比べるとまだ物価が安いという利点もあります。アムステルダムなど都市圏の物価は相当値上がりしてきているものの、それでもまだロンドンよりは安い。そして企業規模は5~10人と小さいのですが、Eコマースやネットマーケットに関連しているようなスタートアップの数が非常に多く、世界中から多くのタレントが集まっているという特徴があります」とジュリアンさん。

クライアントからしてみると、こうした多彩な才能をプロジェクトごとに分けて起用したりするのに、アムステルダムは非常に向いているようです。

今でももちろん大手代理店がクライアントとがっちりタッグを組んで、すべてのクリエイティブをコントロールするというやり方はあるものの、クライアントによってはプロジェクトごとに担当のエージェンシーを変える、という日本では一般的なやり方も増えています。

これは逆の見方をするとクリエイターにとっては、チャンスにあふれているともいえます。クライアントも常に新しいタレントを探しているわけですからね。

実はこれらが起点となって、アムステルダムではクリエイターたちのエコシステムができています。

上述の環境があるために、世界中からチャンスを求めてクリエイティブタレントが集まります。アムステルダムは最初のコラムにも書いたように、今や世界一多様性のある都市です。外部から来たクリエイティブタレントがチャレンジしやすい土壌が元々できています。

もちろんアムステルダム市もこうしたことがわかっているので、税制面での優遇やスタートアップに対してのバックアップなど、タレントが集まる環境を整えています。

そして、クリエイターたちをつなぐネットワークが、アムステルダム中に点在する環境抜群のシェアオフィスです。合理的なオランダ人にとって、スタートアップの当初からオフィスに投資するという考え方はあまり一般的ではありません。あんなに素晴らしいシェアオフィスが市内に数多くあるのに、まだまだお金のない初期に自前でオフィスを持つのは、ばかげていると考えます。

余談ですが、そうしたシェオフィスにはUberやBooking.comなどの今や巨大資本になった企業も入居しています。

UberやBooking.comも入居しているシェアオフィス「SPACES」。

ソフトバンクが巨額投資して、シェアオフィスの黒船と騒がれている「We Work」は市内に数カ所あり、アムステルダムのクリエイターやスタートアップのネットワーク形成に重要な役割を果たしています。

こうしたクリエイターを取り巻くエコシステムができているのがアムステルダムなのです。シェアオフィスもこういう文脈で考えると、その価値がわかってくるのではないでしょうか?

そもそも、オランダ人はコミュニケーション好きで、初対面の人とも友達か?と思うくらいにしゃべります。ですから、シェアオフィスのネットワークパーティなんかは大盛り上がりです。

こうした要素が全部つながっているのです。

次ページ 「オープンイノベーションを受け入れられるか?」へ続く