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コラム

クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 

Brexit問題がアムステルダムのクリエイティブ産業を活性化する?

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【前回コラム】「オランダのクリエイティブ人材を輩出する教育機関「メディアラボアムステルダム」」はこちら

実は今、ヨーロッパ中の人たちが、その行く末を気にしている問題があります。そう、Brexitです。イギリスがEU、つまり欧州連合から出る、というアレです。もちろん日本にも直接、間接的に何らかの影響があるかもしれません。

そして、これはクリエイティブ産業も例外ではありません。

しかも、イギリス・ロンドンにおけるクリエイティブ産業は巨大です。読者のみなさんもご存知のように、クリエイティブ産業は単独で存在しているわけではなく、常にクライアントがいるからこそ成り立っているわけです。ということで、常にクライアントの動向にも注目しておかなければなりません。ここがポイントです。

今回インタビューに答えてくれたオランダ経済省 企業誘致局 シニアプロジェクトマネージャーのハンス・カイパースさん(右)と、アムステルダムインビジネス シニアマネージャー/ジャパンデスクチーフのリクート・ジュリアンさん(左)。

アムステルダムはBrexit後のEUクリエイティブ産業を誘致ができるか?

さて、そこで今回は、こうした事情に詳しいオランダ経済省の企業誘致局シニアプロジェクトマネージャーのハンス・カイパースさんにお話を聞いてみました。

ハンスさんによると、例えば自動車産業などでは製造過程において、組み立てた部品が何度もEU内で国境をまたぎ、別工場に移動しながら作られていると言います。そうした部品がEU外にあるイギリス工場に移動するとなると、その度に関税がかかることが予想されます。こうした関税はバカになりません。どの業界でも、コスト削減が厳しく求められている昨今、こんなことが許されるはずありません…。こうしたことを回避するためにイギリスから出て、ヨーロッパ大陸の国に移転するという企業がいても全くおかしくはないのです」とハンスさんは聞かせてくました。
と、なると。クリエイティブ産業が、イギリスを出るクライアントの後を追って、EU内の他の国に行くという選択肢も十分に考えられるのです。

ロンドンの広告業界の従事者は2.5万人と言われています。それに対して、アムステルダムは2万人。都市規模の違いを考えてみると、アムステルダムがロンドンに匹敵するクリエイティブシティであることがわかるのではないでしょうか。

このBrexitがアムステルダムに与える影響について、ハンスさんいわく「影響は、実はまだわかりません。だってイギリスの人たち、つまり当の本人たちもどうなるかわかっていないのですから…」とのこと。とはいえ、影響がないわけではなく、これからヨーロッパ進出を考えている企業やヨーロッパにヘッドクオーターの設置を考えている企業は、イギリスを避ける傾向にあることはハッキリしてるようです。

クリエイティブ産業を見てみると、まだそれほどイギリスを出て他のヨーロッパ諸国に移転する動きは見られないものの、前述の通り、クライアントの移転に合わせて自分たちも移転する準備をしているところは多くあるようです。つまり、今はみなが、どうなるかはわからないが、移転する準備をしているということです。

ヨーロッパ大陸の国で、ほぼネイティブと変わらないくらいの英語を話す国がオランダですから、クリエイティブ産業にとっては、アムステルダムはかなり魅力的な都市かもしれません。

次ページ 「クリエイターのエコシステムをバックアップする優れた制度やシェアオフィス環境」へ続く