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注目高まる行動経済学「コントロール幻想」で購買意欲を高められる!?

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2017年のノーベル経済学賞は、「行動経済学」の権威である米シカゴ大学 リチャード・セイラー教授が受賞しました。
多くの経済学モデルの基本前提となっている「合理的経済人」(自己利益を最大化しようと完全に合理的に選択・行動する人間)という仮定に異議を唱え、心理学を応用して経済行動の意思決定について分析する「行動経済学」。
マーケティング専門誌『100万社のマーケティング』では、柏木吉基氏による連載「行動経済学でわかる非合理な消費者のホンネ」を掲載中です。最新号では、人間の客観的・合理的判断を歪めるバイアスの一つとして「コントロール幻想」を紹介します。


柏木 吉基(かしわぎ・よしき)
データ&ストーリー代表多摩大学大学院 ビジネススクール客員教授
横浜国立大学・亜細亜大学 非常勤講師

日立製作所入社。MBAを取得後、2004年日産自動車へ。海外マーケティング&セールス部門などを経て2014年独立。グローバル組織の中で社内変革のパイロットを務め、経営課題を解決。これらの実績に基づいた「デジタル時代にこそ求められる、課題解決型思考」を研修や実務サポートの強みにしている。新著に『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らないできる人のデータ・統計術』。


キャンペーン賞品の当選は、
①主催者側に委ねられ、完全にブラックボックス
②応募者がインプットした4桁の数字によってランダムに決まる

あなたなら、どちらに応募したくなるだろうか。
また、どちらのほうがあなたの当選確率を上げると思うだろうか。

行動経済学で「コントロール幻想」と呼ばれるバイアスがある。客観的には一切コントロールが利かない事象に対して、あたかも自分が影響を与えることができている、と感じてしまうバイアスだ。

その結果、その実現可能性をもコントロールし、自分に都合の良い結果がより起こりやすくなるという錯覚を抱く。

宝くじ売り場の店員さんに渡された6桁のくじと、LOTO6のように自分で6桁を決めたくじとでは、後者のほうが当選確率に影響を与えられると“感じてしまう”あれだ。

理論的には、いずれも当選確率は全く変わらないことは言うまでもない。先の例では、後者の選択肢であると、応募者は自分で当選確率をコントロールでき、その結果自分の当選確率が上がるような感覚を持つと言われている。

コントロール幻想による事実誤認は、客観的な意思決定を歪める。歪められた意思決定は、客観的・合理的判断に反することは事実である一方、その結果はポジティブにもネガティブにも働く可能性がある。

例えば、俗に”ジンクス“と呼ばれるものもその一つだ。

「朝食に牛乳を飲んだ日はサッカーの試合で勝てる」といったジンクスを追求することで勝率が上がるという錯覚は、挑戦者の意欲を(前向きに)高めるかもしれない。その結果、(動機が錯覚であっても)勝てれば問題ないのかもしれない。

でも、その結果、本人の意識以上に負ける確率があることを知らず、必要以上にリスクテイクしてしまう結果になるかもしれない。

いずれにせよ、人の行動を変えてしまうバイアスであることは間違いない。上手く利用するにしても、自分が合理的な意思決定から遠ざかってしまわないための知識として知っておくことは重要だ。

次ページ 「とにかく相手に決めさせる」へ続く