メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

「ヒットさせてと言われても」山本宇一×天野譲滋×谷尻誠×石阪太郎 座談会【前編】

share

【前回】「京都の伝統工芸を世界に売り込め!「GO ON (ゴオン)」プロジェクト(後編)」はこちら

空間プロデューサーの山本宇一さんは、東京の「カフェ文化」の草分け的な存在。駒沢「バワリーキッチン」、表参道「ロータス」「モントーク」などの空間プロデュースに加えて、人と人がつながるコミュニティーをつくってきました。心地よい空間をデザインし続けてきた山本さんですが、ヒットの秘訣はむしろ「世の中の流行に乗らないこと」だと語ります。今回のデザイントークでは、山本さんのデザインに共感する、ジョージクリエイティブカンパニーの天野譲滋さんと、建築家の谷尻誠さんをゲストに迎えて、電通ライブの石阪太郎さんが聞き役となり、ヒットする空間づくりの思考プロセスを探ります。

レアな3人がそろったディスカッション

石阪:本日のテーマは「ヒットさせてと言われても」です。今回、登壇いただいた3人がつくる空間は、いつも多くの人が集まり、しかも人気を集め続けています。その要因はどこにあるのか、手掛けた案件と解説を通して学んでいきたいと思います。

天野譲滋
デザインビジネス プロデューサー

京都生まれ。ジョージクリエイティブカンパニー代表取締役社長。話題性と売れる物販や飲食のショッププロデュース。メーカーとデザイナーをディレクションした売れる商品開発。リアルな企業戦略プロモーションやマーケティングを多数手掛ける。デザインビジネスプロデューサーとして「デザイン」をビジネスとして成立させるプロフェッショナル。業界トップランナーのインテリアショップ・シボネと国立新美術館のスーベニアフロムトーキョーや全国多店舗展開のジョージズを創業。放送作家の小山薫堂率いるオレンジ&パートナーズと資本業務提携した。

天野:山本宇一さんが、こういう場に登壇されるのは非常に珍しいことなので、今日はかなりレアな3人がそろったなと思っています。

僕が宇一さんと初めてお仕事をしたのは、ジョージクリエイティブカンパニーを立ち上げる前で15年ほど前になります。「CIBONE(シボネ)」という、新しいライフスタイルを提案するショップを立ち上げるときに、クリエーティブディレクターとして参加していただきました。

「シボネ」という店名も宇一さんに決めてもらいました。当時、宇一さんがグッチやプラダのようにカタカナ3文字で、無国籍な名前にしたいと言っていた。実は僕は「なんでシボネだろう?」と疑問に思っていたんですが、実際にオープンしてみるとお客さまから「どこの国のブランド?」とよく聞かれ、まさに狙っていたフラットなブランドづくりに成功したなと感じました。

谷尻さんには、東京ミッドタウン敷地内の芝生広場で行われるデザインイベントで「マウンテンジム」という巨大なジャングルジムを制作してもらいました。

谷尻誠
建築家。SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役

1974年広島生まれ。2000年建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE設立。14年から吉田愛氏と共同主宰。広島・東京の2カ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設など国内外合わせ多数のプロジェクトを手がける傍ら、穴吹デザイン専門学校客員特任講師、広島女学院大学客員教授、大阪芸術大学准教授なども務める。最近では東京事務所に飲食業態「社食堂」や不動産屋「絶景不動産」を開業するなど、活動の幅も広がっている。著書に「談談妄想」(ハースト婦人画報社)「1000%の建築」(エクスナレッジ)、作品集に「SUPPOSE DESIGN OFFICE -Building in a Social Context」(FRAME社)が11月日本発売予定。

谷尻:最近、公園からジャングルジムが消えていっているそうです。その理由は「高いところから落ちると危ない」ということのようで、そうであれば、なだらかな山形にして、ジャングルジムのワクワク感と安全性のバランスがとれれば、子どもたちに喜んで遊んでもらえるのではないかと企画しました。松の角材を2500本使用して、シンプルな仕組みで、大人が50人ぐらい登れる荷重設計です。

天野:3歳ぐらいの小さな子でも、ビルの2階ぐらいの高さがある頂上まで一気に登って、飽きずに遊んでいましたよね。手触りもすごく良くて、谷尻さんは“ぬくもりのあるデザイン”が、すごくうまいと思いました。

「コーヒーの香り」が漂う1500冊の旅行本が並ぶ店舗

天野:表参道にあるエイチ・アイ・エス店舗のリニューアルを担当しました。現場のリサーチに行くと、多くの人がエイチ・アイ・エスの店舗でパンフレットを取って、隣のカフェでコーヒーを飲みながら見ているんですよ。これは、もったいないなと思って、誰でも入れるパブリックスペースをつくりました。

そして、ブックセレクターの幅允孝さんに選んでもらった約1500冊の旅をテーマにした本を並べました。猿田彦珈琲のスタンドを設置して、コーヒーを飲みながら旅に関する本を読んで気になった場所については、近くにいるエイチ・アイ・エスのコンシェルジュがパンフレットを渡してくれる仕組みです。売り上げもすごく上がりました。

山本:「ロータス」の近くですよね。先日、お店の前を通ったら、トークイベントを開催していました。

天野:月に1回、旅をテーマにしたトークイベントを開催しています。幅さんのファンが来店したり、猿田彦珈琲に引かれる人もいたり、トークイベントに来る人もいたり、人が集まるきっかけを増やすことを意識しています。

次ページ 「カフェ文化の草分け「バワリーキッチン」誕生の背景」へ続く