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「ナイキを創った男」の自叙伝が仕掛ける、書店を巻き込む販促術

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ABCマートとのコラボレーションも

書店では、積極的にイベントも開催。ナイキジャパンの社長を務め、フィル・ナイトと直接議論を戦わせてきた秋元征紘氏が登壇した刊行記念イベント「フィル・ナイト・NIGHT」を皮切りに、「現代日本のフィル・ナイトを探せ」をうたった起業家向けのイベント、スニーカー業界のカリスマを招いたトークイベント、NIKEのグローバル・キャンペーンを担当していたクリエイティブディレクターが登壇するイベントを実施している。

取材日にTSUTAYA TOKYO ROPPONGI(六本木)で開催されていたイベント。

さらに、「ナイキの靴を一番多く売っているところは、ナイキに対する熱量も高いのではないか」ということで、ABCマートにコラボレーションを打診。

「ナイキ好きの人は間違いなく読みたくなる本」と快諾され、ABCマートの一部店頭において、ナイキのシューズを買った人限定で『SHOE DOG』の概要をまとめた4ページの小冊子を配布した。1カ月にわたるコラボだったが、多くの店舗で予定よりも早期に配布しきってしまい、予想以上に反響があったという。

全国紙に15段広告の出稿も。

こうした立体的な展開は、コンテンツとしてティザーサイトに集約している。書籍の特別ダイジェスト版、書店員たちのコメント、著名人たちからの推薦コメント、「#ナイキを創った男のタグ」のリアルタイム検索結果、メディア掲載記事など、『SHOE DOG』に関する情報を一覧で見ることができる。

編集者から見た『SHOE DOG』

話題を生んでいる同書だが、翻訳編集を担当した編集第一部編集長 翻訳委員会委員長の佐藤朋保氏の目には、どう映っているのか。

「前半は日本の話に多く割かれているのですが、翻訳書でこれだけ日本のことが書かれているのは珍しい。加えて海外の目線から日本企業や日本人のことが赤裸々に書かれている点もユニークです。ナイキがどれほどのブランドになるかという結論はわかっていますが、かといって予定調和ではなく、ノンフィクションとしての面白さがある。この本にはいわゆる成功法則などは一切書かれておらず、成功に至るまでの葛藤が描かれていることに面白さがあると感じます」

佐藤氏の意見に、笠間氏も同調する。

「現代におけるナイキは華やかなマーケティングを行う会社というイメージが先行していますが、この本に書かれているのはナイキの創業後数十年の泥臭い時期のことです。ただそれこそがナイキの原点であり本質でもある。この本を読んで、ナイキの哲学やカルチャーはそう簡単に表現できるものではないと感じました。

刊行記念として実施したイベントでは、元ナイキジャパン社長の秋元征紘さんがナイキの代表的なキャッチフレーズである「JUST DO IT.」は翻訳するなとフィル・ナイトから言われたという話をされていました。「JUST DO IT.」は単なるキャッチフレーズではなく、ナイキの哲学やカルチャーそのものを体現しているんだと。じゃあその哲学やカルチャーとは何かというのが、この本に詰まっているのだと思います」

(左から) 東洋経済新報社 マーケティング局営業推進部の島舞衣氏、編集第一部編集長・翻訳委員会委員長の佐藤朋保氏、出版局 書籍プロモーション部 部長の笠間勝久氏。