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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

ビデオリサーチのAbemaTVリリース取り下げを題材に、「視聴率」と「視聴数」の違いをはっきりさせよう。

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【前回の記事】「「72時間ホンネテレビ」が示した可能性を遠回りしながら考える」はこちら

調査会社がリリースを取り下げた

先月末はびっくりして、がっかりな件がありました。経緯は他のメディアの記事に書いてあるので、ざっと読んでみてください。

参考:ビデオリサーチ、「『ホンネテレビ』視聴者207万人」リリース取り下げ トップページで謝罪(ITmedia 17/12/04)

かいつまんで書くと、11月28日にビデオリサーチ社が「うちの調査パネルVR CUBICで調査したらAbemaTVを見た人は2.4%で、これを人口(15〜69才)に当てはめて、AbemaTVを視聴した人数は207万人と推計しました」というようなリリースを出したんですね。

ところが翌々日の11月30日にリリースを取り下げ「ご迷惑をおかけ」したと謝罪文を掲示した。それはどうやらサイバーエージェント藤田社長が取り下げるようクレームをつけたかららしい。ざっくりそんな内容です。

「ビデオリサーチが取り下げた」ことが話題になり、ヤフトピにもそのニュースが出ていました。かなりの数の人が知ったでしょう。

私は「取り下げた」ことにびっくりしました。調査会社が一度出したリリースを取り下げるなど前代未聞です。

さらに、それがサイバーエージェントの抗議が原因であり、そのことが藤田社長のつぶやきから明らかになったのもすごい展開。これを見て私はがっかりしました。

ビデオリサーチ社が抗議を受けて取り下げたのは、とても悲しいことだと思いました。調査会社が自社の調査パネルで何かを調べて発表する。推計の根拠も示しているし、そこには何も悪い点はありません。

他の調査会社も普通に行うことです。もちろん関係者の中には「余計なデータ出しやがって」とか「そんな数値、全然違うぞ!」などと怒る人もいるかもしれません。でもいいんです。文句や抗議を受けても、「我々の調査はこうです!」と胸を張って言えばいい。抗議を受けて取り下げたり、ましてや謝るのは悲しいです。そんな必要ないのに、と。

それより、ずっとがっかりしたのが「AbemaTV」です。前回の記事でも、水を差したことを言いつつ、やっぱり応援したつもりです。立ち上がってすぐにインタビューしたし、メディア界の大いなる挑戦にエールを送ってきたつもり。

でも、自分たちのメディアについて数字が出た時に意に沿わないからといって「取り下げ」を要望するのはお門違い、筋違いです。もし自分たちのデータと違うならスルーするか、数字を公開するかではないでしょうか。

「数字を出すな、取り下げろ」。そんなこと、クリーンなメディアが言うべきことではない。だからがっかりしたわけです。大いにがっかりしました。うなだれるくらい。

AbemaTVは「72時間ホンネテレビ」を通じて、しがらみにとらわれない清新なメディアとして受けとめられました。それが最大の効果だと、前回私は書いたつもりです。でも、気にくわないデータが出たら「取り下げろ」というのは、自分たち自身が「しがらみ」的な存在になるも同然です。ミイラ取りがミイラになったようなもの。まったく、いただけない。

私の周りのお友だちは、みんなAbemaTVに期待しているし、だからこそみんなもがっかりしていました。味方を失いましたね。

こうなると、当初から7400万というすごい数字だけを出してきたAbemaTVの姿勢も問いたくなります。すごい数字は出すけど、人数は出さない。ビデオリサーチがデータを出すと取り下げろと言う。何かを隠したがっているようにさえ思えてしまいます。そんなことないと思いますけど。

これは7400万をすごい、すごいとはやし立ててきたメディアの責任もあります。7400万はどうすごいのか、よくわからないのに褒めすぎです。中には「視聴率では10%を超える」などと平気の平左で書かれた記事もありました。無茶苦茶です。視聴率には、単純には換算できないのに。

そこを強引に乱暴に換算したのが前回の記事で、その無茶な試算では視聴率0.75%でした。でもこれは、まったくアテにならない遊びで出したものです。考え方を示したくて書いたわけです。

次ページ 「平均視聴率10%が持っている意味」へ続く