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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

ビデオリサーチのAbemaTVリリース取り下げを題材に、「視聴率」と「視聴数」の違いをはっきりさせよう。

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「取り下げ」させたことが伝わったほうが、よっぽどマイナス

「BS放送」ってありますよね。あなたの家にもテレビがあって放送が映る状態なら、5分の4くらいの確率でBS放送が視聴できます。知っていますか?知らないって人は、意外と多いと思います。

BSはNHKがずっと前から放送していましたが、民放キー局も2000年から開始しています。それからもう17年間ずーっと放送しています。見てみると、けっこう有名なタレントが出ていて、なかなか面白い番組もあります。プロ野球など、スポーツも放映しています。

でも、ひょっとして、あなたは見たことないかもしれない。見たことあるよ、という人は、周りのお友だちや上司、後輩に聞いてみてください。知らない人は多いですよー。ごく普通のテレビで、ごく普通に映るのに。BSボタン押すだけなのに、知らないんです。知っていても、見たことがない。この17年間、簡単に見られたのにですよ。

AbemaTVだって、あなたはひょっとして見たかもしれない。でもお友だちに聞いてみてください。

「ああ、なんかネットで話題になっていたもんね。え?ぼくは見てないよ。そもそもAbemaTVって、どうやって見るの?あれ?ぼくのスマホに入っていたわ、AbemaTV。これで見られたわけ?ふーん」

そんなもんですよ。まだまだ、まだまだまだなんです。

メディアが多くの人びとに日常的に楽しまれるには、長い長い長い時間がかかる。当たり前ですよね。

それなのに、何百万人とか1千万人が見たんだぞ、すごいぞー!って騒いでも意味がないですよ。だって根づかないと、メディアはビジネスにならないんだから。

Netflixだって2007年に配信をスタートさせて、2013年に「ハウス・オブ・カード」をつくって、やっとメジャー感が出てきたわけです。2年目のAbemaTVがテレビを脅かすなんて、いくらなんでも早すぎです。

視聴数7400万。良かったじゃないですか。でもそんなに、ものすごいことでもない。それでいいと思いますよ。視聴率への換算なんか意味がないし、調査会社にクレームつけるのも意味がない。207万人が伝わるより、「取り下げ」させたことが伝わったほうが、よっぽどマイナスです。

AbemaTVについては、地上波テレビと同じように番組の間にCM枠を入れるモデルはつらそうだなとか、このところ感じていることはたくさんありますが、とりあえず今回はエネルギーが尽きたのでこんなところで。

いろいろ言いましたけど、果敢に挑戦しているからこそ、気になる存在なわけで、結局は応援しているつもりです。こんなんじゃ、フォローにならないか。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書「拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―」 株式会社エム・データ顧問研究員/電通総研フェロー お問合せや最新情報などはこちら