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コラム

あの有名なコピーは、なぜココロに残るのか。

江戸のコピーライター・平賀源内の「遊びゴコロ」とは?

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あけすけな表現で笑いを誘う

さらに、「きくかきかぬかの程、私は夢中にて一向存じ申さず候えどもたかが歯を磨くが肝心にてそのほかの効能はきかずとも害にならず」と他人事のように無責任な態度で読者を突き放し、

「ありようは銭がほしさのまま早々売り出し申し候。お使いあそばされ候て、万一よろしからず候わば、だいなし御うちやり遊ばされ候ても、たかのしれたたるご損、私方は塵つもって山とやらにて大いに為に相成り候」と開き直ってみせます。

「効能があるかどうかは分からないけれど害にはならない」「こちらは金欲しさに売り出したのだから、あなたがもし気に入らず捨ててしまっても大した損にはならず当方は得をする」と臆面もなく言い立てているのです。ここまで露悪的に言われるとかえってユーモアが生まれ、表現の奥に真面目な商人の顔が見えるような気さえしてきます。

締めくくりはこうです。
「皆様ご贔屓お引き立てにてだんだん繁盛仕り、表店へまかり出で金看板を輝かせ今の難儀を昔語りと、お引き立ての程、すみからすみまでずらりっと願いあげ奉り候。そのためのお断り左様にカチカチカチカチカチ」。

芝居の口上の名調子で盛り上がる仕掛けになっています。つまり、引札のコピー全体がひとつのお話であり、逆説と冗談で味付けされていることを最後で種明かししているのです。

この引札は江戸っ子の気質にぴったりな粋な語り口で、江戸町人はこの文を何度も読んで楽しんだといいます。広告で遊べるということは、この時代は広告のつくり手も読者も大人だったのかもしれませんね。

源内は稀代のアイデアマンだった

源内は、エレキテルを日本中に広めた発明家としても有名です。また「土用丑の日にうなぎを食べると夏バテしない」という今日まで伝わるうなぎのキャンペーンは、源内が知り合いのうなぎ屋に頼まれて考案した卓抜な販売促進プランだったといわれています。

当時、土用丑の日には「う」のつくものを食べるという流行があったため、それに乗る形で発案したようです。「う」の文字を店頭に掲げ、POP効果も狙ったとか。「酷暑にうなぎのかば焼きを食べてスタミナをつける」というキャンペーンが、今や年中行事として生活習慣に組み込まれているのは驚きです。