コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

世界王者の村田選手が登場! エンダム戦を振り返る(ゲスト:村田諒太)【前編】

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「栄光」と「寂しさ」はセットでやってくる・・・?

中村:今、村田選手は表彰式ラッシュのようで。日本プロスポーツ大賞殊勲賞から、紅白のゲスト審査員も決まって。おめでとうございます。2017年は村田選手にとってはどんな年でしたか?

村田:オリンピックの年に次ぐビッグイヤーでしたね。オリンピックの金メダルほどドカンと何もかもが変わることはないんですけど、そのときの経験があるので、また同じような波が来たかなという感じですね。

中村:やっぱり前のオリンピックのときは、周りの自分を見る目や行動がガラッと変わりましたか?

村田:変わりました。僕は全くもって一般人だったのに、オリンピックの後はメディアに半年ぐらい出るわけじゃないですか。でも、実際は冠が変わっただけなんです。村田諒太は村田諒太なのに、金メダルという冠で、その冠に対して周りの対応がワーッと変わっていくという経験を一度していて。今回の世界チャンピオンもほぼ同じようなものですよね。

中村:波がまた来るなと。

村田:表彰してもらうのはうれしい反面、そんなものだろうなという意識は、オリンピックのときに一度経験している分ありますね。

中村:広告業界でもオリンピックのような賞があるんですよ。予選通過して銅を獲れたらすごいというところで、僕は当時ウマが合って金賞をばんばか獲れた時期があったんです。そのときに周りの見る目が変わったんですよね。

自分は何も変わっていないのに、周りが君はすごい人なんだと言ってくれることによって、自分もすごい人に変わらなければいけないと深層心理で思ったのか、先に言われたことで実が伴ってくるところが僕にはありました。村田選手はどうですか?

村田:少なからずあるんじゃないですか。そうやって振る舞わなければいけないし、そういう生活をしなければいけないということが必然的に生まれてくるので。トレーニング面でもこの状態になったら負けられないという意識も強くなりますよね。ただ、寂しくないですか?

中村:え、何がですか?

村田:根本は変わってないのに。それはやっぱり寂しいものです。人間のこういうものなんだな、ということを知るというか。

中村:そこがかっこいいんだよなぁ。寂しいと言えちゃうあたりが。

村田:うれしいかどうかと言うと、みんながすごいと言ってくれてることに対して温度差があるじゃないですか。ありませんか?

中村:もちろんあります。本当の自分を知ってもらっているわけじゃないというような。

村田:そうなんです。だから大学時代の汚い居酒屋に行って、同じ寮に住んでる奴とちびちび飲んで何の意味もない時間を過ごしていた頃の行動が懐かしくて、それをしたくなるんです。

中村:わかります。おっさんになるとそうですけど、村田選手は早くないですか(笑)? 僕は37、38歳でようやくですよ。

村田:26歳のときにオリンピックで金メダル獲って、チヤホヤされて。また31歳で世界チャンピオンになって波が来ると、されればされるほど、そうでないときの自分を確認したいし、そうでないときの友達の対応の変わりのなさというものにホッとしたり。そこを求めたくなるわけですよ。

中村:わかります。

村田:そういう空しさ、寂しさみたいのは栄光と同時に来ますよね。

中村:そんな1年だったと。

村田:僕はプロボクサーなので酒を飲んでる場合じゃないし、実際はそんなことはできないですけどね。でも、そういう欲求に駆られる瞬間があります。人に言われているうちに自分がそういう風に演じていくという話がありましたが、言葉の影響は僕も大きいと思っていて。言葉は意味もないのにずっと話していると、勝手に意味を持ってきたりするじゃないですか。

中村:どういうことですか?

村田:たとえば、この間、「ボクシングってあなたにとって何ですか?」と聞かれたんです。明確な答えはないんです。でも、説明するわけです。仕事でもあるし、これぐらい全うできなければ何事も全うできないものでもある。かと言って、嫌いかと言うと、そうではなく好きでもあるし。これがなければ今は生きていけないだろうし。それがなかったら今の自分の人生は考えられないだろうしと話していくわけですよ。そのとき思ったのは、ギフトだなと。

中村:ギフト?

村田:神様がくれたギフトだなと。じゃあ、ギフトって何だろう?と考えたら、結局人生ですよね。我々は神様に命を、人生を与えられてるわけじゃないですか。これこそがまさにギフトなんだと。そのうえであるのがボクシングじゃないですか。

中村:そうですね。

村田:ボクシングをギフトと捉えて、それが自分の全てと思っちゃうと、ちょっと違うと。それを失ったときに自分はどうなるのか。非常に薄弱で怖いじゃないですか。この捉え方はいかんのだろうなと。ギフトでもあるけど、全てではないと。言葉の意味って凄いなと思うんです。話しているうちに自分では思いもよらなかったことが思いつくって。

中村:そうですよね。僕の仕事は広告ですが、どこどこの講師に行ってくださいと言われて講義する際は、自分が今までつくった仕事を振り返って分析して言葉にしてみるんですよね。それを聞いた人の反応を見たりすると、改めてこういうことだったんだなと。

講義を聞いてくれた人には悪いけど、違ったなと思うこともあるし。自分で言葉にして、言語化して反芻してみると、意外と僕って同じようなことばかりやってるなというのがまとまってきたりするものですよね。

面白いですね、村田選手にとってのボクシングとは何なのかを、今まだ村田選手が考え中というのが。

村田:これもまた変化するじゃないですか。中村さんも間違ったことを言ったわけじゃなくて、そのときはそれが答えなんですよね。でも、それは変化するわけであって、答えは一定のものではない。だから、その場で嘘をついたかというとそうではなくて、全くもってそう思ったことを言ってるけど、それすらも変わっていくのであって。昨日こんなこと言ったけど、明日ちょっと違ったなとか。この会話ですら何時間後にそうでもないな、と思うこともあるわけですよね(笑)。

中村:ありますね(笑)。

村田:言葉というのは本当に面白いなと。言った瞬間に生き物として変化していくという。

中村:そんな話をしているなかですが、実は今回で今年は終わりです。なので、村田選手は年をまたいでのゲストです。そろそろ2017年の最終回を終わりにしたいのですが、ここである方がやってきました(笑)。

澤本:(小声で)すみません。

中村:澤本・権八のすぐに終わりますから。CMプランナーの澤本大先生です。

澤本:(小声で)はい、良いお年を。

村田:今年の最後の回は澤本・権八ではなく、まさかの「中村・村田のすぐに終わりますから。」になりました(笑)。

澤本:今年一番良い回だったような気がします。

中村:いやいや(笑)。というわけで、そろそろお時間になってきたので、来年も引き続き、プロボクサー、世界王者の村田選手をゲストにお迎えしてお送りします。

<後編につづく>

構成・文:廣田喜昭

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