古典的な「ドリルが欲しいのか?穴が欲しいのか?」の議論
昔からあるマーケティングの議論に「ドリルを買う人は“ドリル”が欲しいのか、“穴”が欲しいのか?」というものがある。これは1968年に出版されたT・レビット博士の著書「マーケティング発想法」に出てくる話で、レビット博士は 「ドリルを買う人が欲しいのは『穴』である」ということを書いている。しかし、この現象そのものが現在変わりつつあると考えていいのではないだろうか。それでは、なぜ変わったかを検証してみたい。
まず1968年当時は、穴を開けるためのオプションが非常に少なかったと考えられる。基本的には工具店に赴き、ドリルを買うということが必要になっただろう。すなわち“自由に穴を開けることができる”と“ドリルを所有する”ことが、ほぼ同じ意味合いだったのではないだろうか。もちろん“ご近所さんや友人に借りる”ということも可能だろうが、貸主との連絡ややりとりが煩雑で、長い間返さなかったり、汚れや傷もつくので経済的なロスも発生するが、それを合理的に補う方法がない。また、貸してもらうようお願いするという心理的な負担も発生する。しかし現在ではドリルを所有しなくても“穴を開ける能力”を簡単に手早く、安心に取引することが可能になっているのだ。
ドリルを入手することも簡単になってきている。お店に赴かなくても通販で簡単にすぐ入手できるサービスが多数存在する。あるいはドリルを購入しなくてもそれを手放そうとしている人、あるいは貸してくれる人を簡単にオンラインオークションなどで探すことも可能だろう。場合によってはドリルを持っていて穴を空けてくれるサービスを提供してくれる人もいるかもしれない。このように多くのオプションがデジタルテクノロジーの進展によって生まれることになったのだ。そして“ドリルの物理的所有”と“穴を開けることのできる便益”が分かれることとなった。
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