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デジタルテクノロジー/マーケティングの進化で実現するシェアリングと所有の二極化経済

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メルカリは“所有”と“利用”の中間地点か?

現在、急成長中しているサービスにメルカリがあるが、今までもネットオークションサイトが存在していたにも関わらず、このサービスの急成長に影響した消費者のインサイトとしてはどちらかというと“シェアリング”のコンセプトに近いのではないかと考えている。それは、非常に簡単に金額的にも手軽に取引できるところにある。

例えば引越しをしてまもなく、DIYのために穴を開ける需要がある人が“メルカリ”でドリルを買って一定期間利用してその後、再びメルカリに出品して売却したとする。「買って」「使って」「売る」という行為ははさむが、買ったり売ったりする手間(経済用語ではTransaction Cost)が少ないので結局「使って穴を開けた」という便益が残り、そのコストは「買った価格」—「売れた価格」ということになる。そして一連の事象が終了すると「穴を開けた」という便益だけが残るのだ。

またこれも最近、消費者の心理的に非常に重要なインサイトだが、無駄なものを持っていると「もったいない」「資源の無駄」という背徳感から「断捨離」という気持ちが生まれる要因になる。その意味ではメルカリは「断捨離をマネタイズする方法」ということもできる。

従来はドリルを買って穴を空けるという同意義のものが、現在では様々な価値に分解されている。もちろん希少性の高い、あるいは歴史的な意義の高いドリルもあるだろう。それらは観賞用に高値でオークション取引されることになり”保有していることがステータス”として“穴を開ける”便益とは異なる価値として認識される。その価値の分解を図式化したものが以下になる。

メルカリが登場した時に「こんなもの売れるのか?」と疑問を呈した人が多くいた。確かに「売買」という行為にだけ着目するとそのように見えるだろう。しかし、「こんなもの」とは誰かが不要になったものであり、所有にかかるコスト(廃棄に対する心理的な負担も含む)もかかるので「利用できる人に適正な価格であげたい」という気持ちが働く。買う人も、欲しいものを能動的に探すことももちろんだが、サイトを見ていて偶然出会った商品に運命を感じ「そういえばこんな物欲しかった」というセレンディピティも手伝い、簡単に購入に走るのではないだろうか。

自分が所望したものではなかったり、利用価値がなくなればまた売ればいいということであり、しかも簡単に売れるのでこだわりがないのではないかと推測される。
 

高級なラグジュアリー体験がバカ売れする時代

一般的な機能の商品がシェアリングに向かっていく一方で、ラグジュアリー体験型の高級商材やサービスは所有に向かっている。非常に象徴的な事例としてJR九州の高級列車「ななつ星in九州」の人気が挙げられる。

高価格ながら予約がなかなか取れない「ななつ星in九州」

ななつ星が提供する列車は豪華仕様で博多駅にある専用ラウンジを含めた超高級仕様の列車旅行体験は1泊2日で30万から80万円、3泊4日で60万から140万円という高額な料金にも関わらず、2017年10月~2018年2月期は15.9倍、2018年3月から9月までは11.3倍という高い予約率を誇っている。航空業界ではLCCや格安高速バスなどが提供している“移動”という価値だけでなく、列車ならではの移動前も含めた移動中の体験を価値として提供しており、限定感もあるのでこのように高額でも人気を博しているのだろう。

すなわちLCCや高速バスは“移動という目的を達成するための運搬手段の一時利用”と捉えることができ、ななつ星は移動ではなく“究極の贅沢な旅行という体験価値の提供“していると捉えることができるのではないだろうか。

次ページ 「より付加価値を高め、経済効率を高める“ダイナミックプライシング”」へ続く

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