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コラム

ヒーローたちの必殺マーケティング術

服育? 食育?それがどうした—NHK・Eテレ「ビットワールド」の狂育マーケティング

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狂育番組「ビットワールド」

「ビットワールド」は、視聴者の投稿による参加型の番組です。舞台は近未来のディストピア。視聴者はビットキャッスルの住人となり、うじゃ虫という「バグ」を駆除することで手に入る「カオスダマ」を集めます。

データ放送によるリアルタイムのゲームに参加し、それが番組に反映される仕組みになっているのでテレビのリモコンが「武器」になります。

番組の仕組みはオーソドックスなのですが、とんでもないのはその常軌を逸した世界観です。とても形容しがたいのですが、強いて言えば90年代いいころのフジテレビでやっていた「ウゴウゴルーガ」。あとギャグマンガの「バカドリル」。

そこに、サイバーパンクとアニメと8ビットのゲームとヒップホップ…とあらゆるサブカルチャーをごった煮にして、中二病をこじらせた「狂育バラエティ」とでも言えばいいでしょうか。

ドラえもんの劣化パロディーや、日本の昔話をぶっ壊すなどクレイジーなコンテンツ満載です。お世辞にも教育に良さそうとは思えません。生真面目なお母さんなら育て方を間違えたと、悩んでしまいそうです。

ちなみにリーダーは“ノーライフキング”で知られるいとうせいこうさんが務めています。何も知らずにセイコーと呼び捨てにしているが、日本のヒップホップやサイバーパンクの先駆者だったんだぞ、娘よ。

そして、ヒロインのアスミンこと中田あすみさんの絶対領域も実に狂暴であります。

教育マーケティングの誤解

子どもってどうしてこう、ジャンクでクレイジーなものに惹かれるのでしょうか。

テレビ番組に限らず、おもちゃにしても北欧のきれいな色使いの積み木より、アートディレクターが一生使わないようなピンクや紫のプラスチックのガジェットが好きだったり、洋服だって品のいいブランド物より、変てこなデザインのお気に入りを毎日のように着たがります。

教育にはじまり服育や食育、知育玩具など子どもを「育む」マーケティングが盛んになっていますが、そこには少なからず親の趣味や「こうあってほしい」という身勝手な願望があるような気がします。

もしかしたら、子どものインサイトは全然違うところにあるのかもしれません。

「ビットワールド」より「ピタゴラスイッチ」を見て欲しいぞと願ってしまうのはきっと親の傲慢なのです。

私たちが低俗と切り捨ててしまうものの中には、きっと子どもたちを惹きつけてやまない蠱惑的な何かがあるのでしょう。それらをすべて排除してしまうより、少しくらいは認めてあげるほうが免疫がつくのかな?なんて最近では思えるようになりました。

次ページ 「クレイジーって楽しい」へ続く