コラム

国民総ダンサー時代前夜に考える、ダンスとクリエイティブの幸福な関係

ストリートダンサーと一般人の間に流れる深い川、「グルーヴ問題」について

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【前回コラム】「「このダンス企画は、なぜあの人が振付なの?」はどう決まるのか」はこちら

ダンサーにとっては命!「ノリがあるダンス」とはどういうことか

写真 飯野高拓(梅棒)

このコラムでは広告制作者とダンサーの意識の差について語るということになっていますが、 今回のテーマはストリートダンサーとストリートダンサーではない一般の方々の間に深くて大きな川として流れている(ダンスにおける)「グルーヴ問題」について書いてみたいと思います。

ダンサーが「○○のこのノリ、やばいよね」などと言っていると、「ノリ(笑)、雰囲気にかぶれてる」というような若干バカにした反応が返ってくることもありますが、陽気だね、ノリノリだねみたいなことではなく、もっとテクニカルなことなのです。

音に乗る、というのはどういうことなのか。
これを理解しておくと、ダンス企画でのタレントキャスティングや、振付の考え方にも役に立つと思います。
なぜなら、ストリートダンス的な映像表現をしたいときに、ダンスにノリが無いのは致命的なことだからです。
ただ、なかなかダンサーでも言語化するのは難しいものがあり、以下個人的解釈・表現になりますがご容赦ください。

また、これは後半で書こうと思っている「どのアイドル・アーティストがダンスが上手いの?」という、これまたよく聞かれる質問への答えに大きく関係してきます。

音に乗っているダンスというのは「ノリ」がある「グルーヴ」がある、という表現をされます。
これはより厳密に言うと、「リズムに乗る」です。
逆に、リズムが無いことを「リズムに合わせる」と呼び、比較して説明すると分かりやすいかもしれません。
ストリートダンスで用いられるほとんどの曲が四拍子。定期的にやってくる音の連続をリズムと呼びますが、 これについて、

音が点でやってくると考え、そのタイミングに合わせて動くことを「音に合わせる」と考え、

音が波でやってくると考え、そのピークに合わせて動くことを「音に乗る」と考えてみます。

点でやってくるというのは太鼓の達人のように、音がタイミングとして流れてくる状況を想像してください。
そのタイミングに合わせて、この動き、このポーズ、という感じで踊るとしましょう。お遊戯の「大きな栗の木の下で」を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。それぞれのポーズをなぞっていく形で動きは生まれますが、静止から静止の過程として動きがあるだけなので、リズムのうねりのようなものは、生まれにくくなります。

それに対して、音を波と考えてサーフィンのように乗って行くと、タイミングだけでなく、緩急が生まれ、波のピークでないときも波が引くという流れがあるので、基本的に静止していることがなく(一瞬、静止していたとしても)、常に体の中に音の波が流れ続けることになります。そのことで、躍動感や高揚が生まれ、それをノリ、グルーヴと呼ぶのかなと思います。
波のピークをダンスによって鋭角に表現すれば「キレ」が出ますし、緩やかに表現すれば「ため」が生まれます。

と、言葉で説明してもなんとなくしか分からないと思いますので、グルーヴ溢れる動画をご紹介しておきます。

 

日本が誇る女性ダンサーのYOSHIEさんと、SALAHのバトルです。SALAHは私がアメリカでシルク・ド・ソレイユのマイケルジャクソン作品を見たときに、主役をやっていた世界的ダンサーです。観客もお二人のグルーヴに乗せられていっていることがよくわかります。

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