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プロジェクトのようにドキュメンタリーを撮り、ドキュメンタリーのようにプロジェクトを進める【大島新×前田考歩】

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テレビドキュメンタリー『情熱大陸』(毎日放送)や『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)を手掛ける一方、『園子温という生きもの』や『カレーライスを一から作る』といった映画作品の監督やプロデューサーも務める大島新さん。
大島さんが代表を務める映像製作会社ネツゲンで、「プロジェクトとドキュメンタリー作品の共通点」をテーマに、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の著者 前田考歩さんが対談を行いました。

大島新氏(左)、前田考歩氏(右) 株式会社ネツゲンにて

無意識のうちにプロジェクトをしていた

前田:今日は、ドキュメンタリー映像作家の大島さんに、プロジェクトの進め方について聞くという、ちょっと異色の対談なんですけれども。早速ですが大島さん、この本読んでいただけましたか?

大島:はい。読んでいて気が付いたのは、ドキュメンタリー制作というものが、この本で定義する「プロジェクト」そのもので、無意識のうちにいつもプロジェクトやっていたんだ、ということです。ドキュメンタリーなので、当然、一筋縄ではいかないことも起こるんですが、なぜそうなってしまうのか、それをプラスに転じるにはどうすればいいのか、ということをこの本が言語化してくれたと感じました。さすがにもう20年やっていますんで、最近は大きな失敗は少なくなってきたんですけど、いまだにゼロにはなりませんよね。

前田:ドキュメンタリーにおいて問題が起きるのは、どういう部分が多いのでしょうか。

大島:一番多いのは、属人的な問題ですね。スタッフや被写体との関係など様々です。
何度か仕事をしたスタッフであれば、ある程度ツーカーというか、暗黙のうちに共有できていた前提が、初めて仕事をする人とのやりとりになると「あれ、そう受け取っちゃう?」みたいなことが起こる。

前田:ありますね。社外とのやり取りはもちろん、大きな会社であれば社内でも部署によってコミュニケーションの作法が違うということがあると思います。

大島:なんで揉めるかというと、答えがないんですね。出版でも同じだと思うんですけど、答えがないものに向かって、答えらしきものを皆で合意して、探していかなければならないじゃないですか。でも結局何が正しいかって、わからないんですね。

前田:それは作品の中身が、ということですか。

大島:中身もそうですし、視聴率がどうだったとか、観客動員がどうだったとか言われても、違う内容のものは同時には発表できないわけで。番組でも、映画でも、一回出したら売れなかったからといって「じゃあこっちで」というわけにはいかないですからね。

前田:プロジェクトの基本的な性質として、それが一回性のものでやり直しがきかない、ということがありますからね。

大島:そうなんですよ。だから世に出す前に、試写とかでプレビューと言って、編集途中のものをみんなで見て意見を言い合う場があるのですが、そこでバトルが起こるわけです。2回くらい見てディレクター(監督)とプロデューサーが合意して、3回目くらいで確認のプレビュー、という流れだと結果もいいことが多いんですが、「なんか違うな」となったら、4回5回、下手したら6回7回と試写を繰り返すこともあります。

前田:その都度編集しなおして、コストが発生して……

大島:はい。そういう場合は、そもそもの前提が間違っている場合が多いですね。スタッフの間で完成物のイメージが違うから、いつまでたっても「これだね」ということにならない。だからドキュメンタリーというプロジェクトにおいては、コミュニケーションが一番のキモだと思います。

次ページ 「左手に大きな花束、右手に小さなナイフ」へ続く


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