高橋書店『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』
『編集会議』2018年夏号(7月31日発売)の特別編としてお届けする。
やんちゃな小4男子がワクワクする本をつくる
—「ざんねんないきもの」とは、一生懸命なのにどこか“ざんねん”な生き物たちのこと。この“ざんねん”という言葉にはついつい読みたくなる、不思議な魅力がありますね。なぜ生き物のざんねんな部分に着目したのでしょうか。
書籍編集部 主任 山下利奈さん
2008年高橋書店入社。販売部にて最優秀新人賞を獲得したのち書籍編集部に異動し、児童書・生活実用書を担当。担当書籍に、累計268万部突破の『ざんねんないきもの事典』シリーズ、累計50万部突破の『親子で遊べる たのしい! おりがみ』シリーズなどがある。
私は主に図鑑などの児童書や生活実用書をつくる部署にいるんですが、図鑑の制作過程で生き物の生態を調べていると「こういう一面もあるんだ!」とワクワクする瞬間があるんですね。例えば広告にもなった「リスは、ほお袋で食べ物がくさって病気になる」。「リスがせっせと餌をほお袋にため込む姿は愛らしいけど、さすがに腐らせてしまうくらいため込まなくても……」とざんねんに思ってしまいますよね。
そこで、あえてその意外な一面にスポットを当てた本をつくったら面白いんじゃないかと考えました。通常、図鑑は動物たちの身体的特徴や能力などの「すごいところ」を中心に紹介しますよね。ざんねんなところはマメ知識として1行2行入る程度で。
“ざんねんないきもの”という言葉は企画段階からなんとなく浮上していて、編集部内では「しっくりくるね」と言っていたのですが、やはり生き物にマイナスイメージが付いてしまう恐れもあり、社内外から反対意見もありました。監修をお願いした動物学者の今泉忠明先生も、誰よりも生き物を愛しているからこそ心配していらっしゃって。本当に「ざんねん」とつけていいのか葛藤することもありましたが、生き物に興味や愛情を持ってもらうにはこの言葉しかないと思い、気持ちを押し通しました。
—大人も思わず「へぇ~!」とうなってしまうような内容で、幅広い年齢層にウケている本書ですが、本来は児童書。子どもに訴求するために工夫した点を教えてください。
ターゲットですが、今回はほんとにピンポイントで「小学4年生男子」に絞っていました。とにかく面白いものが好きで、悪ふざけはしても本はあんまり読まないような男の子です。家の中にいるというよりは外で昆虫を捕まえてくるような。なんとなく、イメージがわきますよね? ちょうどそのとき、別企画で小学校を取材させてもらうこともあったので、そのついでに「小4男子」を観察して、彼らがワクワクしながら読めるような本にするにはどうすればいいだろうかと考えました。
例えば単語や表現は極力小学4年生が理解できるものだけにしましたし、頭の中でイメージしやすいように「忍者のようにダッシュ」などの例え表現もふんだんに盛り込みました。
また、今泉先生には、生き物たちのいろんなエピソードを聞かせていただいたときに、疑問をたくさんぶつけました。私の疑問に対して納得のいく答えを返してもらえなかったときは、原稿にしても子どもには伝わりにくいかなと考え、盛り込むネタの判断基準にしていました。
—通常の図鑑と違って、生き物たちがイラストで描かれている点も特徴ですね。とても愛らしい表情で親近感がわきます。
そうなんです! ちょっと珍しい試みなのですが、本書はあえて写真を使っていません。イラストであれば、なかなか写真では切り取れない動物たちの意外な一面を分かりやすく表現することができると考えました。
また、「ざんねんなところも含めて愛おしい!」と思っていただけるように、イラストはゆるくて可愛いテイストを意識しました。構図も工夫していて、例えば「ドリルはおしりが青く光るほどえらい」というテーマでは、こちらにお尻を向けたドリル(サル)の姿を描いていただきました。イラスト制作は、こちらから見せたいシーンや言わせたいセリフを共有して、あとはイラストレーターさんのイマジネーションにお任せする形をとりました。
ただ、本書は子どもが見る「事典」なので、指の数や牙の付き方などの生き物の特徴は忠実に再現しています。本書に登場する生き物は、日常生活や動物園、水族館などで子どもたちが実際に会いに行けるような、身近な動物です。実際に動物園などで本書を片手に動物を観察してくださっている方もいるようで、そんな場面では図鑑のように楽しんでいただけたらと思います。
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