コラム

コピーライター養成講座 講師・卒業生が語る ある若手広告人の日常

〜「コピーってどうやって教えるんですか?」第1回〜

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【前回のコラム】「悩める後輩コピーライターへ贈る言葉 — 博報堂 下東史明の場合」はこちら

3月2日から始まる「コピーライター養成講座 先輩コース」は、「先生」と「生徒」ではなく、一歩先を行く「先輩」に、コピーライターとして生き抜く術を学べる内容となっている。「先輩」の1人、下東 史明氏に「コピーってどうやって教えるんですか?」と話を聞いてみた。

コピーってどうやって後輩へ教えるんですか?
私が新人のころについてくれた先輩は、歳が30も離れていまして、あまり具体的なことは教えてくれませんでした(笑)。「適当に自然と身につけろ」と指示され、試行錯誤を続けてきたのです。今でも勉強中。ですから、人に教えるような立場の「先生」というよりは、「先輩」として、講座では前に立っています。

コピーライター養成講座 先輩コース』のことですね。
そうですね。実は当社(博報堂)でも、入社3年目の社員向けのコピーライティング研修の講師も務めています。基礎的なテクニックとその応用、さらに先の自発的な学びについて講義をしているのですが、「教える」ということに少し向き合ってみて感じたのは、教えるという作業は学ぶ作業の100倍難しいということです。

コピーにも、テクニックがあるのでしょうか?
明快にありますよ。書店で広告関連の書籍を開いてみれば見つかります。思い込みや苦手意識から書籍を敬遠している人には、ぜひ読んでもらいたい。ただ、いわゆる「合格体験記」のような本はあまりおすすめしません。

テクニックは、すぐに身につきますか。
「身につく」をどう定義するかによりますが、まずはテクニックを知る、ということが重要です。インドにこんな話があります。とある村に数学的天才の少年がおり、彼は幼くして周囲の子どもたちより多くの問題を速く解けたんだそうです。ただ家が貧しかったため、中学や高校には行かず、1人で学習を続けました。

成長したある日、イギリス留学から帰国した幼なじみに会い、天才少年は興奮気味に、「僕はついにすごい定理を見つけた!」と話しました。すると幼なじみは、少し戸惑いながら「この定理なら3年前にロンドンの学校で教わった」と告げたそうです。すでに世に出ている知識を把握することには、一定の意味があるのではないでしょうか。

講座ならではの価値は何でしょうか。
当たり前ですが、すべてのことが本に載っているわけではなりません。また著者によって主張がさまざまであるため、情報が錯そうし、整理されていない、ということもあります。言い方や表現が異なるだけで、内容が重複している場合もあります。講座では、それを私なりに再整理し、体系化して教えています。

具体的には。
いわゆる良いコピー、特にマーケティング上の効果があるという意味で「良い」とされるコピーは、ほぼすべて、ある特定のコトやモノ、ヒトを「新しく」するものです。つまり、目にした消費者が、何らかの新しさを見出し、「得をした」と思えるようなものだということ。

「新しくする」テクニックには、「利便性」「カテゴリー」「根拠」「使用者」「用途」「競争軸」「使用機会」「企業そのもの」といった8つのジャンルがあります。小さなテクニックはこのほかにもまだまだあります。講座ではこうしたテクニックを身につけるための訓練方法も一緒に、なるべくほかとの重複しないように紹介しています。

テクニック以外には、どのような内容を予定していますか。
テクニックはあくまでテクニックです。テクニックのおかげでずいぶんとコピーを書くのが簡単に思えるだろうし、実際コピーを考えやすくなるはずです。少なくとも日本語として意味がわからないものや、トイレの落書きのようなコピーを書かないようにはなれるかと思います。

でも、最も大切なのは、言葉に対する「姿勢」です。言葉からコピーができる以上、言葉そのものが本来どのような意味を持ち、どのように文脈を変え、どんなイメージを伝えるのか。それを身につけないことには、言葉は単なる「記号」でしかありません。東京コピーラーターズクラブの『コピー年鑑』を読む際も、ワーディングや言い回しといった、表層的な「記号(の操作)」だけを追いかけるのではなく、コピーが限られた文字数に内包している「意味」に注目する必要があります。

くわしく教えてください。
曲の歌詞で考えてみると、わかりやすいかもしれません。世の中にはよく似た内容の曲がたくさんありますが、聴いたときにすごく心に響く曲と、特になにも感じず、聞き流してしまう曲とがありませんか?

その理由を僕なりに指摘すると、言葉を「記号」としてのみ扱っているか、「意味」に焦点を置いているか、という違いだと思うんです。心に響くものは、「記号」でなく、一つひとつの言葉が本来持つ「意味」を重視して、歌詞を書いているからだと思います。

コピーも同じです。試しに、「良いコピーだな」と感じるコピーを思い出してみてください。どれも極めて平易な言葉で作られてるのに、そのコピーの「意味」に深い共感を抱いているはずです。単なる文字の羅列である「記号」でなく、「意味」に人々は惹かれるのです。

なんだか、とても難しいように感じます。

コピーのつくり方をもう少し深く説明すると、何らかの視点や提案に基づいた「言いたいこと」があり、それを言葉に表したのがコピーです。

【「言いたいこと」→言葉を選ぶ/言葉を組み合わせる→コピー】

つまり言葉は、「言いたいこと」を伝えるための乗り物、「ビークル(vehicle)」なんです。乗り物を正しく理解していないと、うまく「運ぶ」ことはできませんし、深く知らないと、既成の言葉だけで構成された、どこかで聞き覚えのあるようなコピーになってしまいます。このリスクを少しでも避けるには、言葉に対して向き合う「姿勢」が大切だと思います。

「言いたいこと」自体の視点が良ければコピーも良くなるのでは?
一見そう思えるのですが、それが落とし穴です。平凡な訴求内容なのに素晴らしいコピーも、思い返してみればたしかに存在すると思いませんか?

コピーを教える時も学ぶ時も、言葉そのものよりも、どちらかと言えば「言いたいこと」や「言うべきこと」の発見が大切にされがちです。それらは先述のようなテクニックの範疇で、意外とすんなり解決できると僕は思っています。

そのため講座では、見つけ方ではなく、言葉そのものについての理解を深めるための「姿勢」をお伝えしたいと思っています。

(次回はその「落とし穴」に気づいたきっかけから、より詳しい講座の内容についてお伺いします。)

〜第2回へ続く〜

下東史明
博報堂 コピーライター

1981年 京都市生まれ。2004年 東京大学法学部卒業。同年(株)博報堂入社。第四制作局、第一クリエイティブセンターを経て現在、統合プラニング局。主な仕事にMINTIA「俺は持ってる。」、一本満足バー「まんまん満足。」、カルピスウォーター「ぜったい、いい夏に、しよう。」「キュン飲みしてる?」「私は好きだから。」、AQUOS「活きる力を起動する。」、エアーサロンパス「スポーツが好きだ、大好きだ!」、GABA「ハイ、そこでGABA。」、大和ハウス「アスフカケツノ」、GreenBird「ポイ捨てカッコ悪い」「ポイ捨て反対」、味の素「スープDELI」、NTTグループ「つなぐ。それは、ECO」、住友商事「もがき楽しめ。」、胡麻麦茶「血圧川柳」「高橋克実さん」、イエローハット、KOSE、JAL、IROZA、ほか。受賞歴にTCC新人賞、TCC審査委員長賞、ヤングカンヌ日本代表、JR東日本ポスターグランプリ金賞、日経広告賞、One Show(Merit)、新聞広告朝日賞、アジア太平洋広告祭ブロンズ、交通広告グランプリ作品賞著書に『あたまの地図帳』(朝日出版社) 『トレインイロ』(朝日出版社)TCC賞審査員、宣伝会議賞審査員も務める。

 

下東さんが講師を務めるコピーライター養成講座 先輩コースが2019年3月2日(土)から開講します。少し先を行く先輩から、コピーの学び方を学び、実務に生かしていく術を身につけていきます。くわしくはこちら 

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