「気づいてもらう」ために、議論をまき起こす 【芸人・五明拓弥 × マーケター・井上大輔 対談】後編

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【前回】「「面白い」を決めるは誰?【芸人・五明拓弥 × マーケター・井上大輔 対談】前編」はこちら

お笑いトリオ「グランジ」の五明拓弥さんは、東京ガスのラジオCMを機に広告制作に携わり、同作でTCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞・メディア部門ラジオ最優秀賞など数々の広告賞を受賞し、昨年には、『全米は、泣かない。』(あさ出版)が出版されました。今回は『たとえる力で人生は変わる』の著者 井上大輔さんとの対談後編。芸人である五明さんとマーケターである井上さんに、話題を巻き起こすために必要なことや、表現のモチベーションについて語り合ってもらいました。

井上大輔さん

五明拓弥さん

議論が話題を生み、話題が認知を生む

井上:「炎上マーケティング」が正しいかどうかまでは保証できませんが、議論を呼ぶことで話題を生み、話題が認知を生み出す、という構図はマーケティングにおいてもはや一つの正攻法といってもいいかもしれません。

ナイキのキャパニックの広告がまさにそうです。2016年に、NFLのサンフランシスコ49ersに所属していたコリン・キャパニックが、黒人や有色人種への人種差別的な事件の多発に抗議して、試合前の起立と国家斉唱を拒否し批判の的になりました。彼はその後チームをクビになり、ずっと干されていたような状況だった。その間キャパニックをずっとサポートし続けていたのがナイキで、昨年末、彼が夢や自由を語るCMを公開したのです。

その結果、キャパニックは「非国民」なのか、「自由の国アメリカの象徴」なのかという議論が沸き上がりました。ナイキはこうなることを当然わかっていたわけです。結局、その広告は大きな話題となって、ナイキのオンラインセールスを大きく押し上げました

五明:そんな風にフツフツしないと気づいてもらえませんからね。

井上:そうなんです。現代人が1日で触れる情報量は江戸時代の人が一生のうちに触れる情報量よりも多い、とかよく言われますよね。そんななかで、いかに素敵なバンドやお笑いグループだったとしても、自分たちの存在に気づいてもらうは並大抵のことではありません。議論を起こして話題になる、というのは一つの手ではある。ただその場合、ナイキの例のように、一貫した主義主張とそれに伴う一貫した行動がないとただの炎上で終わってしまう。

議論を呼ぶコミュニケーションが、日本でも「好感度」を上げるのか、という問題もあります。結局アメリカでタレントが政治的発言をするのも、そんなタレントを企業が起用するのも、トータルで見た時にそれでタレント自身や商品の好感度が上がる、という文化的土壌があるからで。でも、事前に調査をしてコントを作れば、それはとにかく議論は起こせそうですね。

五明:まちがいなく起きるでしょうね。仲間うちでも、「そんなことすんな」とか、「おもしろいことするなあ」とか、賛否両論出そうです。賛否が50:50ぐらいの、ちょうどいいフツフツかもしれない。反対が多くなると炎上になるでしょうからね。そこのパーセンテージを予測するのは難しそうですね。

井上:難しいですね。お笑いをアートと捉えるか、エンターテインメントと捉えるかで違ってくるしょうし。アートなら調査なんかしてほしくないでしょうけど、エンターテインメントは人々を喜ばせるビジネスなので、人と対話する、つまり調査をするのはむしろ推奨されるべき。

ただ音楽やコントが日用品なんかのビジネスと少し違う点は、曲を作ったりネタを作ったりする時に、ものすごく努力をしたり強い思いが詰まっていたりしますけど、物凄い大金がかかるわけではありませんよね。例えば、日用品の場合シャンプー1本作るだけでも、広告費やら開発費やらで何十億円もかかるケースもあるわけです。だから調査をして確かなものを作らなければいけない、という話はある。

五明:調査をしても思ったような結果が出ないこともあるんですか。

井上:そこは結局パワーゲームになっちゃうところもあります。世界中で話題になった動画も、大体動画の面白さ単体ではなく、裏に大量の広告の援護射撃があることがほとんどです。

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