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世界初オンデンザメの4K撮影プロジェクトはどう進んだのか?

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カメラを入れても生き物がいなければ意味がない

渡部:海底にカメラをおとしても、そこに生き物がいなければ番組にならないので、カメラの前に生き物を呼び寄せる必要があります。また、カメラに映ったとしても、フェードインしてすぐにスーッとフェードアウトしてしまったんじゃ絵になりません。長くカメラの前に留まっていてもらう必要があります。

そこでいくつか工夫をしました。一つはライトです。深海は水深200mで光が届かなくなるので、強いライトを発すると生き物が逃げてしまうと考え、赤色のライトを使用しようと関上げました。これだと赤外線で撮影したような赤くて画質的にも良くない映像になってしまいますが、生き物の撮影可能性が高まると考え、通常の白ライトに加え、赤ライトも採用することにしました。

もう一つは、カメラについて、増田氏はこれまでにない斬新な丸い形のベイトカメラ(海底据え置きカメラ)を設計して下さいました。深海カメラを扱う際に最も避けたのは、海底に落としたカメラを回収できない、ロストしてしまう事態です。これは後日増田氏に教えて頂いたことなのですが、これまでも駿河湾の深海に挑んだ深海カメラは結構あったのですが、そのいずれもが、箱型、もしくはフレーム型だったそうです。

泥と起伏に富んだ駿河湾の海底に着地した際に、転倒したとしても岩場に引っかかったりして回収できない可能性が少ないであろうことから、丸型にこだわられたということでした。さらには、軽量化し簡単に扱えることで、沖合いの揺れる船上で人命の確保やケガを防ぐなど、プロジェクトを成功に導くために考えを重ねて、増田氏が辿り着いた答えが丸型だったんです。

前田:せっかく撮れた映像も回収できなければすべてが失敗に帰しますし、船上での安全性まで考慮した設計だったという訳ですね。さすが百戦錬磨の専門家の視点だと感銘を受けますし、プロジェクトの成功可能性を高め、かつリスクを低減させる上で、非常に重要なポイントだったということがわかります。素人の私などは、カメラを落としたポイントに生物がいないリスクを考えると、ロボットにカメラを積ませて海底を移動させるという手もあるのではないかと思いますが・・・。

渡部:それだとモーター音などで魚が逃げてしまうので、据え置き型を採用したという訳です。さらに、生き物を呼び寄せるために、カメラに据え付けるエサをカツオのハラミやカマに加えて、油ののったサバを切って、深海に血と油のにおいを漂わせようと。

前田:なるほど。カメラの設計、採用するライト、エサの工夫などのお話をうかがうと、中間目的としては、「生物をカメラの前に呼び寄せ、滞留させている」ということになりそうですね。カメラを落として生き物を捉える可能性を高めるために、様々な工夫・意思決定をしておられたということがよくわかります。実際にこのような準備をされて、撮影自体は順調にお進みになったんでしょうか?

渡部:今回のプロジェクトではスケジュールがタイトで、カメラ完成後、本来であれば水族館などでテスト撮影などを行うのですが、そうしたテストを行うことができませんでした。

前田:ぶっつけ本番。

渡部:そのため、早めにRECボタンを押してしまうと熱暴走が原因で録画が途中で終わってしまったり、落としたカメラが海底で傾いてしまったりして、ちゃんと映像を撮ることができませんでした。

前田:そうした想定外の事象に対して、現場でどのような対応をされたんでしょうか?


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