プロモーションの領域を再定義し、「新しい価値」を提供するために — 『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』(前編)

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2016年、JPM協会は、デジタルテクノロジーの普及・進展によって大きく変化している生活者の購買行動に即して、2006年に初版が発行された『プロモーショナル・マーケティング』を全面的に改訂し、アップデートするためのプロジェクトをスタートさせました。

それから3年。プロジェクトの成果物として『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』が発行となりました。同書では、デジタルテクノロジーの普及・進展によって大きく変化している生活者の購買行動プロセスを「RsEsPs(レップス)」としてモデル化。また、プロモーショナル・マーケティングの定義自体も見直し、ネットワーク環境が当たり前になった時代の新しいプロモーション・プランニングを提唱しています。

今回のコラムでは、プロジェクトの発足に携わった日本プロモーショナル・マーケティング協会の宮久哲実氏と、第1章の執筆者である読売広告社の保田耕一氏に話を聞きます。

読売広告社 コミュニケーションデザイン統括局 局長代理 保田耕一氏(左)
日本プロモーショナル・マーケティング協会 専務理事 宮久哲実氏(右)

—今回の改訂に至った経緯や背景についてまずお聞かせください

宮久 哲実 氏

宮久:協会として、プロモーショナル・マーケティングの公式テキストを初めて出したのが2006年。そのあと2、3年おきに版を重ねてきたのですが、初版から10年経った2016年に、プロモーショナル・マーケティングのメソッドを全面的に改定して、新しいテキストを作ることを発表しました。

その背景としては、2008年にiPhoneが日本に上陸して、その後、急激なスピードでスマホが普及したということが、まず挙げられます。またそれに伴ってSNSの利用者が急速に拡大し、生活者の購買行動が劇的に変化したのです。そういった変化に対応し、ネットとリアルを融合させた新しいメソッドを開発しなければいけないということで、今回のプロジェクトを立ち上げました。ですから、『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』の刊行には、まる3年かかったということになりますね。

保田:まずはプロモーションの領域が10年前よりも格段に拡がっているということが、プロジェクトメンバーの共通認識でした。これまでのテキストは、どうしても直接的な購買動機づけの記述部分が厚く、これを今の時代に即した内容に変える必要がありました。ざっくりいうと、昔はマス広告で認知を獲得して、SPは刈り取りという役割分担がありましたが、こういった分業は既に過去のものになっています。

—プロモーション環境がすごく今、変わってきていると。それを実感されるような施策としては、具体的にどういうものがあるのでしょうか。

宮久:そうですね。当協会が行っている「JPMプランニング・ソリューション・アワード」という賞があります。そこで、2017年度の最高賞である「プロモーショナル・マーケティング大賞」を受賞したのが「Lipton Fruits in Tea」でした。

これは、自分の好きなフルーツを入れたアレンジティーをタンブラーに入れて愉しむ新しい体験から、紅茶を麦茶に次ぐ夏の「セカンドボトル」に位置づけようというキャンペーンで、表参道のポップアップストアには連日長蛇の列ができました。長年変化のなかった紅茶市場に新しい「体験価値」を提案したこの企画は、InstagramをはじめとするSNSで爆発的に拡散され、20代の女性を中心に熱狂的とも言える人気を得ました。

ほかにも様々な意欲的なプロモーション施策が受賞していますが、これらに共通するのは、単にプレミアムつけるとか、値引きをするといったことではなくて、商品の新しい価値を見つけて、それを生活者に伝えることで、新しい需要を拡大している。そのことを目的にした施策が、大きな流れとして受賞作品以外にもたくさんあるのです。

次ページ 「プロモーショナル・マーケティングの定義から見直した」へ続く

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