コピーライティングとアイデアの発想法~ギリギリまで考える。そして、「熱狂」で心を動かす/左俊幸

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【関連記事】「コピーライティングとアイデアの発想法~左脳の右脳化、その後。/渡辺潤平」はこちら

活躍するコピーライター・プランナーたちは、何からアイデアを考え始めるのか?その起点とプロセスについて掘り下げた書籍『コピーライティングとアイデアの発想法』。その執筆者に本書を上手に使うコツや、自身の発想法について聞きました。今回は、左俊幸さん。書籍の中では「ギリギリまで考える」をテーマにご寄稿いただきました。

宣伝会議コピーライター養成講座 編 定価:本体1800円+税 288ページ、上製本

僕がこの本で書かせて頂いたことは、ざっくり以下の2つになります。

ひとつは「ギリギリまで考える」です。打ち合わせのギリギリまで、プレゼンのギリギリまで、撮影のギリギリまで、編集のギリギリまで、納品のギリギリまでそれぞれずっと考え続ければ、コピーも企画も段々良くなるかもですよという話です。

そしてもうひとつは「みんなで考える」です。自分だけじゃなく、制作会社やスタッフの皆さんも巻き込んで一緒にワイワイ考えていけば、いろんな目線が入ってくるので、自分だけでは気がつけないダメなところも分かってきますし、何よりみんなでワイワイやった方が楽しいので、コピーも企画も段々良くなるかもですよという話です。

…と、まあ、僕が書かせて頂いたことはたいしてタメにならない可能性大ですが、僕以外の皆さんは本当にタメになることをたくさん書かれてました。

ちなみに僕自身が刺さったのは「おりこうな企画とおばかな企画の往復の先に、天才の企画が待っている」「自分自身が面白がって企画するために、効率は無視してやみくもに考える」「書き続けて、考え続けて、見えてくる」「自分のフィルターを通さないと生きたコピーにならない」「今までの経験則を持ち込まないために、頭をまっさらにする」「ダメ出しを、さらにいいアイデアを生むチャンスにする」「論理はアイデアが説明してくれる」「考えて、考えて、考え尽くしたあとに、ぜんぶを捨ててもう一度考える」といった言葉でした。

そして僕はこの本を読んだあと、「サボっててすみませんでしたっ!」と強く反省しました。。僕なんかより全然すごい方々が、僕より断然ストイックな姿勢で仕事に臨んでいる姿を目の当たりにして、正直ぐうの音も出ない感じでした。。事実この本を読んでから、僕自身も多少はストイックになれたような気がします。。

…ですので、もしかすると、この本は若い方々のみならず、少しこなれてきてマンネリに陥っている方とか、サボっても怒られない環境にある中堅の方とか、会社の売上や競合勝利に囚われて初心を忘れそうになっているベテランの方とか、そういった方々が読むのも全然アリじゃないかと思いました。年齢を重ねれば重ねるほど、日々の業務に追われすぎて、「ものづくりの初心」みたいなものを忘れがちになると思いますので…。

…最近仕事をしていてよく感じるのですが、KPIとかKGIとかPDCAとかコンバージョンとかケイパとかファネルとかカスタマージャーニーとかソーシャルグッドとか、そういう賢そうな理屈っぽい言葉を振りかざす人が増えている一方で、アイデアについて泥臭く考え続ける人が、どんどん減ってきているような気がしています。

オリジナルのアイデアを考え続けることは、めんどくさいですしコスパも悪いですし全然スマートじゃないですし、散々苦労してやっと出てきたアイデアが、打合せやプレゼンで全否定されたりするリスクもあります。自分が考えたことを全否定されてしまうと、自分自身が全否定された気持ちになることもあるでしょう…。

…そんなことを想定すると、泥臭いオリジナルのアイデアを考えるよりも、賢そうな理屈っぽい言葉を使って、いろいろ使い回せる感じのデータや資料をペタペタ貼ったような企画書を作っていた方が、めんどくさくないですしコスパもいいですしスマートですし、打合せで恥をかくリスクも低いと思われます。

ただ、そういった企画書は、クライアントさんの気持ちは動かせるかもしれませんが、生活者の気持ちを動かすことは難しいかもしれません。いまのめっちゃくちゃ情報量が多い時代の中で、生活者の気持ちを動かすことができるのは、「理屈」じゃなくて「熱狂」ではないかと思うのです。

「iPhone」も「Googleマップ」も、「君の名は」も「カメラを止めるな」も、「パプリカ」も「チコちゃんに叱られる」も、「全裸監督」も「大きなイチモツをください」も、理屈ありきで生まれたものだとは到底思えません。

つい最近の話でいうと、ラグビー日本代表のヘッドコーチだったエディー・ジョーンズの「熱狂」はジェイミー・ジョセフへと受け継がれ、その「熱狂」は各選手へと伝播し、さらにその「熱狂」は日本中をも巻き込み、そしてラグビー日本代表はワールドカップで奇跡の大躍進を遂げました。

…って、いま僕が書いたのはある種の極論で、これからの時代はデータやシステムを重視していくことも大事だとは思うのですが、なんだかんだ言っても広告の最終的な目的は「人の気持ちを動かすこと」です。なので、その目的を達成するためのアイデアを、泥臭く考え続ける人がどんどん減っているいまの広告業界は、実は相当ヤバいのではないかと思っております…。

この本に執筆されている(僕以外の)皆さんは、まさに「アイデアについて、泥臭く真摯に考え続けている方々」だと思います。賢そうに見える理屈っぽい言葉や、使い回しのデータや資料に逃げず、必死で想像力を働かせ、自分がイイ!と思えるアイデアを、勇気を持って考え続けている執筆者の方々の「熱狂」が、この本を通じて若い方々に少しでも伝わっていけば、広告業界の未来も多少は明るくなるのではないかと個人的には思っています。(※いろいろ言い過ぎてたらすみません。。)

左俊幸
電通九州 コピーライター/CMプランナー

1975年生まれ。主な仕事に「トップリーグの逆襲」「五ヶ瀬ハイランドスキー場 南ちゃんCM」「別府競輪の男達」「髙山質店 買いトリくんCM」「別府温泉の男達」「スマイルプラザ 父ちゃん息子ちゃんCM」など。TCC賞、FCC最高賞、CCN最高賞、OCCクラブ賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリストなど受賞。

 

物事を整理して、言葉でわかりやすく伝える技術をトップクリエイターが解説!
コピーライティングとアイデアの発想法 ~クリエイターの思考のスタート地点~ (宣伝会議養成講座シリーズ)

 

執筆者一覧(50音順、敬称略)
赤城廣治、麻生哲朗、磯島拓矢、岩田純平、岡本欣也、倉成英俊、児島令子、小西利行、こやま淳子、下東史明、菅野薫、谷山雅計、玉山貴康、都築徹、角田誠、中島信也、中村禎、左俊幸、藤本宗将、細田高広、眞鍋海里、三井明子、山口広輝、山本高史、横澤宏一郎、渡辺潤平
 

【本書の構成】
はじめに 仲畑 貴志
 

第一部 アイデアの発想法

発想のカギは オリエン・企業・商品
磯島拓矢 アイデアの起点は商品に決まっているけれど
岡本欣也 コピーライターの仕事は、まず書くことより聞くこと
谷山雅計 コピーの「とっかかり」をどうつくるか
都築 徹  取材と距離
中村 禎  考え始める前に考えること
渡辺潤平 左脳の右脳化
 

発想のカギは 思考法
麻生哲朗 一歩目の覚悟
児島令子 書きたい気持ちをムクムクさせる。
小西利行 新しい世界を見るために、やるべきこと
玉山貴康 積み上げながら 逸脱しながら
角田 誠 絶望の淵に立つ
眞鍋海里 アイデアの設計図はありますか?
横澤宏一郎 先ず、ブイより始めよ
 

発想のカギは 書くこと
岩田純平 とりあえず書いてみる
こやま淳子 からだを動かすと頭も動きだす
藤本宗将 白紙のWordファイルがアイデアの起点
三井明子 方法論は、“やみくも”に考える
 

発想のカギは 最後まで検証
赤城廣治 まだコピーじゃないんだけどね大作戦
中島信也 「おりこう山」と「おばか山」
左 俊幸 ギリギリまで考える
細田高広 逆算のコピーライティング
山口広輝 広告を「人」に置き換えてみる
 

発想のカギは 日々の過ごし方
倉成英俊 「このコピーの時間は、先生の都合により、自習にします。」
下東史明 何をウダウダ言っているのか?
菅野 薫  好きでしょうがないことの蓄積と組み合わせが個性になる
山本高史 日々、起点。
 

第二部 未来のコピーライターへの手紙

池田定博、池端宏介、石井陽一、磯島拓矢、一倉宏、岩田正一、上野達生、占部邦枝、大久保浩秀、岡本欣也、岡本達也、尾崎敬久、河西智彦、國武秀典、倉成英俊、児島令子、こやま淳子、坂口二郎、高崎卓馬、田中幹、谷山雅計、玉山貴康、都築徹、手島裕司、東井崇、東畑幸多、戸谷吉希、虎尾弘之、中尾孝年、長岡晋一郎、中川裕之、中島信也、中村禎、早川和良、左俊幸、廣瀬泰三、福里真一、福部明浩、古川雅之、松井薫、三浦清隆、三井明子、宮保真、村田俊平、森俊博、山本高志、渡辺潤平

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