ブランド論のとおりにやらないのにブランド価値は高い企業
世界最大のブランディング会社インターブランドは、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」を発表していることでも有名です。グローバルに事業展開を行うブランドを対象に、その価値を金額に換算してランキング化するものでブランド業界では誰もが知るランキングです。
この評価手法をもとに、インターブランドジャパンが発表している日本のグローバルブランド(海外売上高比率30%以上)を対象とした「Japanʼs Best Global Brands2019」でダイキンは21位となっています。エアコンでは競合となる日立製作所が24位、三菱電機が27位なので、ダイキンが上位なのはびっくりしますよね。でも世界最大のブランディング会社が認めてくれているのですから、日本のグローバルブランドとしては、ダイキンは優れたブランドといってもよいはずです。
そのような優れたダイキンブランドですが、ブランド論で必ず定めないといけないとされている「ブランドプロミス」はありません。同様に「ブランドマーク管理」もグローバルでは、まだまだ課題だらけです。まったく教科書に載っている方法論のやり方どおりには、できていないのですが、教科書に則ってブランド構築されている企業よりも価値が上位です。
ダイキンが、今やこのようなブランド価値を持つことができたのは、優れた経営者のもと、よい製品をつくり、強い営業力・サービス力があるからに他なりません。ブランドの教科書に載っているブランド構築の方法論による貢献、すなわち、私がブランドに貢献できた部分は(現時点では)まだまだわずかです。逆に、ブランド論では語られることの少ない、別の要素によるブランド価値向上の効果がいかに大きいことかがわかります。
水の上を歩く方法は、「右足が沈む前に左足を前に出して、左足が沈む前にまた右足を前に出すのを繰り返す」ことです。これは方法論としては正しい。ただ実現するためには、1秒間に4回以上足を動かさないといけないらしく、もちろん人間にはできません。
私は世の中の一般的なブランドの方法論にも同じようなところがあるのではないかと思っています。これらのブランド論や方法論は正しい。しかしながら日本企業においては、この方法論をそのまま持ってきても絶対に実行できない。実行できないのだとすると、極論すればこのやり方では、ブランドはつくれないということになります。
世の中のブランド論は、ブランドの力を信じる人々の特殊な世界で生まれたものです。これを現実世界でそのまま素直に展開しようとすると、実行できません。ブランド論には翻訳が必要なのです。
「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」バックナンバー
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