コラム

負ける法則 ~競合コンペに勝てない理由はどこにある?~

前回踏襲の提案でコンペに敗北した話

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「現場のほうでは御社を押す声もありましたが、上層部が違う意見でして……」。

「僅差の勝負でしたが、戦略部分と広告表現案がうまくつながってない印象でしたね」。

「面白い企画案もあったけど、成果が出るかどうか疑問があって……」。

これまでに皆さんも、競合コンペで敗北し、クライアントからこのようなことを言われた経験があるかもしれません。

コンペで負けた際、クライアントにヒアリングをすると、具体的な説明を聞けることもありますが、曖昧な話しか聞けないこともしばしば。クライアントは、本当のところをなかなか語ってはくれません。通常、勝利した企画案の中身も教えてもらえないので、明確に敗因を探ることは難しいでしょう。しかし、負けたコンペには敗因が存在します。

プロ野球の名将・野村克也氏の名言に、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」があります。勝つときにはたまたま運よく勝てる試合があっても、負ける場合には必ず敗因が存在することを意味します。敗因を把握し、修正していくことで、次の試合に勝つ確率を高めていくことができるのです。

ビジネスの世界では勝つためのノウハウを語る本などがたくさんありますが、負けた話が表に出てくることはあまりありません。しかし負けた話には、次へのヒントが隠されています。そこには「負ける法則」とも言うべきヒントが見え隠れしているのです。

たまたま運よく勝てる試合はあれど、負ける場合には必ず敗因が存在する。

連続獲得していたコンペに敗北

とあるメーカー企業の競合コンペに敗北した際、クライアントにこんなことを言われました。

「悪くない提案でしたが、特別良いわけでもなかった。御社に対しては、売りの現場について知見があるという評価をしていたが、今回の提案にはそれが活かされていなかった」と。

このコンペは、季節ごとの販促キャンペーンについてTVCMなどの広告表現を中心に、キャンペーン全体の戦略を提案するもの。季節ごとにコンペが行われますが、我々はそれまで3回ほど連続して獲得していたので、久しぶりの敗北となりました。

コンペに負けた理由は以下のように考えることができます。

・しばらく連続して獲得できていたので、また勝てるという驕りがあった。
・その一方で攻めの姿勢を失っていた。
・前回のキャンペーンと同じやり方を踏襲した企画を提案した。
・提案した企画に新規性が乏しく、マンネリ化していた。
・売りの現場の知見を評価されていたのに、その強みが出ていなかった。

ただ、コンペの準備中には、上記のように自分たちを客観視することができていませんでした。

直近まで続けて獲得していたので、自分たちの方法論が評価されていると考えていました。また、これまでの蓄積効果を継続して活かすことが、次のキャンペーンにも効果をもたらすとも考えていました。継続を提案することで我々が再び獲得できるという目論見もあったのです。こうした考え方の中では、自分たちがいつのまにか「負ける法則」にハマってしまっていたとは気付かないものなのです。

一番の問題は、「売りの現場」の知見があると評価されていたのに、それを活かせなかったことでしょう。考えてみれば元々、「売りの現場」を意識した企画を他社に先駆けて提案したことが、コンペに勝ち始めたきっかけでした。今回の負けた提案も過去の成功を踏襲して企画していたので、現場を意識した企画にはなっていたはずです。ただ、そこに新しさがなかったために、逆にクライアントからはマイナス評価を受けてしまったわけです。

この競合コンペには毎回5社程度の参加がありました。競合他社は是が非でも奪取したいと努力し、勝つための研究をし、コンペに臨んでいたと想像します。

コンペに勝利した他社の提案は、まさに「売りの現場」を意識したものでした。我々がやってきた施策とは異なる形で営業現場を活性化するもので、消費者へのアピールに加え、社内スタッフのモチベーションアップにもつながる企画でした。

次ページ 「「過去の風景」を提示していないか」へ続く

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