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社会になくてもよいモノを売る 元ブランドマネージャーのPR戦略

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決断、私はすべてのお客さまから好かれることを諦めた

私は「SNUS」のブランドマネージャーを経験したあと、加熱式たばこデバイス「Ploom」シリーズのPR部門に異動になりました。「Ploom」は従来の火をつけて吸う、紙巻たばこではありません。デバイスでたばこのスティックやカプセルを加熱することで使う、火を使わずに愉しめる加熱式たばこというジャンルの商品です。「Ploom」をはじめ、加熱式たばこは灰も煙も出ませんし、たばこの煙のにおいや健康懸念物質が紙巻たばこより少ないという特徴があります。

「Ploom」は社内においても最重要ブランドのひとつで、その中で私はPRを担当することになりました。ここでいうPRとは、広告表現を開発するといったマーケティングに近い側面ではなく、どちらかというと、新しい企画、コンテンツを世の中に発信することで、ロイヤルティの高いお客さまをいかに創出するかという観点でのものです。

「Ploom」という商品は、以前私がブランドマネージャーをしていた圧倒的に認知度の低い「SNUS」とは異なり、「聞いたことがある」「広告を見た」「試したけど使っていない」「今も使用している」といったお客さまの割合が多くを占めます。つまり、「SNUS」とは「認知」「浸透」の度合いが異なっており、お客さまの大半は「Ploom」とはどのような商品であるのかを知っているということです。

では、多くの人が何となく知っているモノに対して、そこから「ロイヤルティ」「愛着」を醸成するにはどうすればいいのでしょうか…。これが本当に難しく…。またしても私は壁にぶつかってしまいました。

その壁の正体は商品に対する「既存のイメージ」。つまり、Ploomという商品に対し、ユーザーの中である程度のイメージがなんとなく定着していたことです。というのも、Ploomは既にその機能や性質(においが少ないから家でも使える、紙巻たばこ並みの吸い応えがある、など)、ブランドが持つ世界観(シンプルさ・洗練さ)を踏まえた広告コミュニケーションが広く展開されていたため、お客さまの頭の中には「Ploomとはこういう商品だ」というイメージが植え付けられてしまっていたのです。

「既存のコミュニケーションを踏まえたうえでPRの内容を検討すべきか」「それともまったく新しい価値をPRで伝えていくべきか」。どちらが正解なのか当時の私にはまだ判断ができず、私なりに悩みに悩みぬいた末に決断したことは“すべてのお客さまから好かれることを諦める”ことでした。

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