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いま、人の心を動かすものとは~ 岡本欣也×原野守弘×チャイ子ちゃん®

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脳科学から考えるクリエイティブ

チャイ子ちゃん®:原野さんの著書『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』についてもお伺いしたいのですが、まずは執筆してみていかがでしたか?

原野:書き終わったときにわかったことがあって、この本は『クリエイティブ入門』というタイトルですが、クリエイティブ表現のつくり方は一切書いてないんです。人間は何によって動かされるかということを書いたので、それはクリエイターだけに向けた話ではなく、例えば経理やエンジニアなど、いろいろな職業の方が興味を持つんじゃないかと思っています。

『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』(クロスメディア・パブリッシング)定価:1738円(本体1500円+税10%)

チャイ子ちゃん®:どんな反響がありましたか?

原野:毎日エゴサーチをして「読みました」というコメントを見つけると、僕はすぐリツイートして全員にお返事を書いているんです。すると本当にいろいろな職業の方がいらっしゃる。以前、宣伝会議のイベントで講演をした時、医療機器や業務用シャンプーの会社から「うちの会社でこの話を講演してほしい」という依頼があり、広告とは関係ない一般のビジネスパーソンの方たちに講演をしたのですが、意外にも評判がよかった。それがこの本を書くきっかけになりました。あとは、大学生など若い人からも好評だったのがうれしかったですね。

チャイ子ちゃん®:ぜひ、皆さん、読んでツイートをしていただければ。

岡本:原野さんの本には、脳科学や哲学の話など、そういう要素が織り交ぜられていて、そういう意味では噛み応えがありました。1回目より2回目に読んだときに新たに気づくところがあったり、前とは違うところが入ってきたりしました。

原野:確かに一度読んで全体像をつかんでから、もう1回、読んでいただいたほうが面白いかもしれませんね。脳科学と絡めたのは理由があるんです。クリエイティブは感情を動かす技術で、それは本質的には言語化できない。しかし、多くのクライアントは、言語化されたものや数字しか信じません。そのギャップで、毎回苦労するし、時には意図しない方向に行ってしまうことがある。

チャイ子ちゃん®:なるほど。

原野:だから、理屈しか信じない人に理屈じゃないものをどう説明したらいいのかについて、ずっと考えてたんです。そこに、脳科学がハマった。「脳はそうできている」という話は理屈というより、もはや科学。同じことを「人間は感情でしか動かない」と言っても、本当?ってなるんだけど、「人間の脳がそのようにできている」という客観的な事実は、みんなすぐに信じてくれる。その説明の仕方を思い付いてから、しばらくそうやってみたところ、これでうまくいくかもしれないと思ったんです。

岡本:ここに書いてあるのは、一昔前には右脳、左脳といわれたものに近いけれど、本当は右、左じゃなくて、ということですよね。

チャイ子ちゃん®:大脳辺縁系と大脳新皮質。

岡本:大脳辺縁系と大脳新皮質ですね。詳しくは原野さんの本を読んでいただきたいのですが、脳の二重構造を理解しておくと、確かにクリエイティブを説明するときに役立ちます。というのも、どうしても説明しづらい、なぜか理由はわからないけれどこっちがいいんですよとしか言えないときがあるんですよね。

原野:本当にそうなんですよね。それを受け入れてもらったほうがクライアントさんにとってもいいはずだけど、やっぱり信じられないわけですよね。「それは岡本さんの個人の感想ですよね」ということになりがちなので、「そうじゃなくて…」ということを何回も段階を経て書いているんです。

岡本:だから、大脳辺縁系と大脳新皮質だけを頭に入れておけば、僕が言っていることは辺縁系が反応しているから「こっちがいいと思います」とはっきり言える。

原野:結局、人間の“行動”を握っているのは、大脳辺縁系のほうなんです。そして多くの場合、クライアントのゴールは「行動」です。僕たちクリエイティブがやっている仕事というのは、新皮質を抜けて、辺縁系を直接揺さぶることで「行動」を促すこと。クリエイターが何にこだわっているかといったらそこですよね。だから、そこに価値があることを世の中に伝えたい、伝えたら引退しようという気持ちで書きました。

チャイ子ちゃん®:引退しないでください(笑)。

次ページ 「すべては個人の“好き”からはじまる」へ続く