『ステートメント宣言。』に寄せて(原野守弘)

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「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、クリエイティブディレクター 原野守弘さんが『ステートメント宣言。』を紹介します。

日本屈指のコピーライターが、若手コピーライターに向けて、ボディーコピーの書き方を指南する本。最も表層的にこの本を評するとそうなる。しかし、この本がそれに留まらないことは、一読した者には明快なことだ。

発行:宣伝会議
定価:1980円(税込み)
ISBN: 978-4883355174

まず、読むべきはコピーライターに限らない。ボディーコピー、≒ステートメント、≒マニフェストは、広告キャンペーンにおいては「設計図」のようなものだ。世界に冠たる広告代理店、ワイデン・アンド・ケネディのプレゼンテーションはどういうものか、PARTY時代に伊藤直樹くんに聞いたことがある。

「まず冒頭に、全てが凝縮されたマニフェストを朗読する。それがほぼすべてであり、そのままテレビコマーシャルになることもある」と言っていた。もちろんパワーポイントに複雑に描かれた図表の類は出てこない。

「言葉をまとめると、心はまとまりやすくなるのです」と岡本さんは本書で述べているが、クリエイティブとクライアントが一つの同じ地平に立つために、ステートメントがある。コピーライターに限らず、広告制作に関わるすべての方に知ってほしい実用がここにある。

さらに言えば、「ステートメント」は、広告だけでなく、あらゆる文化的活動、経済的活動、つまり、複数の人間が「心をまとめて」取り組むべき全ての場面で、その力を発揮する。学校のクラブ活動、ボランティア活動、部署の活動方針、国家の運営など、全てだ。

一つの例として岡本さんはこう語る。「最近特に思うのは、企業のホームページって何なんだろうってこと。ほぼすべての企業が当たり前のように持っているんだけど、なんの役に立っているんだろうといつも疑問に思っています」。本当にその通りだ。そして、何のためにあるかわからない文章がこの世にはあふれている。目的を失い、話しかける相手もいない、一人ぼっちの文書。問題を起こさず無難に仕上げることだけを目的に作られる文書は、忖度したり空気を読むことを強制させられる日本社会の象徴とも言えるだろう。

岡本さんは、「きっと、すべての文章は、『組織の人の文章』と『ひとりの人の文章』に分けられる」という。また課題だけが増え続ける現代においては、「ステートメントを書き直せ。それは時代の要請なのです」とも語る。この世の中で立ち往生する「一人ぼっちの文書」たちを救い、「心を一つにまとめる」というステートメントが持つ本来の力を享受するために、この本が役に立つだろう。

「コピーライターは、何屋さんかでいうと、真理屋さんです」と岡本さんは語る。そのノウハウ、姿勢、考え方は、今を生きる全ての人にとって必要なものだ。

原野守弘(はらの・もりひろ)
クリエイティブディレクター

電通、ドリル、PARTYを経て、2012年11月、株式会社もりを設立、代表に就任。
「NTTドコモ: 森の木琴」「OK Go: I Won’t Let You Down」「Honda. Great Journey.」「POLA リクルートフォーラム」「日本は、義理チョコをやめよう。GODIVA」などを手がける。TED: Ads Worth Spreading、MTV Video Music Awards、D&AD Yellow Pencil、カンヌ国際広告祭 金賞、One Show 金賞、Spikes Asia グランプリ、AdFest グランプリ、ACC グランプリ、グッドデザイン賞 金賞、Penクリエイターアワード2017など、内外で受賞多数。
2021年1月、『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』(クロスメディア・パブリッシング)を上梓。

 

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