キー局5社のAI活用に差 テレ朝は“収益化”、TBSは“攻めと守り”、テレ東は方針段階

民放キー局5社の2026年3月期決算が出そろい、各社のAI活用方針にも違いが見えてきた。テレビ朝日はAIを中期経営計画の「5つのキーストラテジー」の一つに位置づけ、コンテンツ開発とビジネス開発の両面で活用を進める。TBSは制作現場での活用とガバナンス体制の整備を並行して進め、フジテレビは番組制作や社内DX、外販可能なAIソリューションに展開。日本テレビは放送品質管理や映像活用の領域で具体事例を示した。一方、テレビ東京は「AI活用先端企業」を掲げるものの、決算発表資料などで具体的な導入事例の開示は限定的だ。

テレビ朝日、AIを「新たな収益構造」の柱に

最もAIを経営戦略に明確に組み込んでいるのがテレビ朝日だ。テレビ朝日ホールディングスは「経営計画2026-2029」で、東京ドリームパーク、IP、ABEMA、CVCと並び、AIを5つのキーストラテジーの一つに掲げた。AI活用については、コンテンツ制作や業務改革にとどまらず、「コンテンツ開発」と「ビジネス開発」で新たな収益を創出する方針を示している。

具体策として、4月1日に新組織「コンテンツ編成局 AIクリエイティブスタジオ」を発足。6月から毎週水曜深夜に放送予定の番組「AI大作戦」を通じて、テレビ朝日およびグループのクリエイター育成、一般のAIクリエイター発掘、オリジナルIPやショートアニメ制作を推進する。AIを活用して制作した短編オリジナルアニメ「ハナと不思議な冒険」は、「World AI Film Festival 2026 in KYOTO」のAIアニメ部門で審査員特別賞を受賞した。

テレビ朝日HDの2026年3月期決算資料より

テレビ朝日HDの2026年3月期決算資料より

業務改革面では、4年間で全社の年間業務時間15万時間削減を掲げる。削減した時間を「人間にしか生み出せない共感や感動を生むクリエイティビティ」に集中投下する考えだ。さらに、社内横断の「AI活用ビジネス開発チーム」を組成し、視聴データやテレ朝iDを分析。新たな収益モデル構築、UGCを活用したファンダムビジネス、地上波・デジタルのデータ統合による広告システム開発も進める。

TBSはVIVANTやひるおびでAI導入

TBSホールディングスは、AIを「クリエイティブの限界を突破するエンジン」と位置づけ、「生成AIの民主化」を掲げた全社横断のAI活用プロジェクトを進めている。2023年7月には「AI活用プロジェクト」を発足し、CTOを委員長に、全社横断の現場メンバー30人が活動している。

「攻め」の活用では、ドラマ制作への動画生成AI導入がある。7月から放送される日曜劇場「VIVANT」続編では制作工程の一部に「Veo 3」を導入し、クリエイターのビジョン拡張、CG制作費・労務時間の削減につなげる。東京2025世界陸上では、スタートリスト作成に「Gemini」を導入。英語PDFの自動読み込みと日本語変換で、作業量を大幅に削減した。

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