その手があった!? AI時代のコミュニケーション カンヌレポート2026

① AI大喜利時代を先取りしたCM

ひとつめの題材は、Social & Creator部門でゴールドを受賞したLegoの「Everyone Wants a Piece」です。

サッカーW杯のトロフィーの形をしたレゴを、メッシをはじめとするスーパースターたちが組み立てていく映像です 。ロナウドやムバッペたちのコミカルなやりとりが見どころですが 、この映像の本当にすごいところは、実はAIが真似しやすい“フレーム(型)”になっていた点です 。実際にInstagramなどでは、このフレームを模したAI生成映像(AIミーム)が多数アップされました 。

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SNS時代は誰もが真似しやすいアイデアが重宝されてきました。それゆえ、ダンス動画など老若男女ができるフレームが多用されていました。しかしこのキャンペーンは、「world’s first globally AI-memed ad in history(世界初のグローバルAIミーム広告)」と謳われている通り 、「AIで真似しやすい広告」のモデルケースとしてゴールドを受賞。

サカナクションの『夜の踊り子』のMVのミームのような、ユーザー主導のムーブメントを企業が意図的につくるのは非常に難しいです 。しかしこの事例は、「シンプルなシチュエーション」「多めのカット割り」「登場人物の絶妙な関係性」で映像を構成することでAIを使って模倣したくなるように設計。その中心を超豪華メンバーが演じることで、ここまで世の中に広げられるのだと、深く感心させられました 。

②「続きはAIチェック!」時代を先取り?

続いてはCreative Strategy 部門やSocial & Creator部門でゴールド、Media部門シルバーなど計6部門で受賞をしたDoveの「r/eal reviews」。

こちらは前回の記事でもご紹介した事例ですが、非常に重要な視点が含まれているため、もう少し深掘りします 。

この企画は一見すると、口コミを広告に活用したよくあるバズ系キャンペーンに見えますが 、リザルトを見ると、このキャンペーンの真の狙いのひとつが「AIによる推奨(リコメンド)の獲得」にあったことがわかります 。今年、延べ400〜500本ほどの応募リールを見ましたが 、リザルトで「AIリコメンド」に明確に触れていたのは、おそらく本作だけでした (もし他にもあれば、ぜひ教えてください)。

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広告コミュニケーションの仕掛けにおいて、ここ20年の最大の変化は「続きはWebで」だったと思います 。マスメディアによる狭義の統合コミュニケーション(AIDMA)が、WebやSNSを絡めたコミュニケーションデザイン(AISAS)へと変化したことで、メディアごとの役割分担という概念が生まれ、クリエイティブが進化しました 。

そして今、AI時代がもたらす最大の変化は「AIによる“確認(検証)”」です 。

ユーザーが何かに興味・関心(Attention & Interest = AI)を持ったら 、あとは各自がAI(LLM)で検索・確認し、商品の概要を把握して、そのまま購入まで完結してしまう。検索や行動(Search ・Action)の部分もAIが担う未来が来るかもしれません。つまりCMの最後が「AIで確認!」や「続きはAIチェック!」となる日も遠くないです(さらに、AIで興味関心を持ったのちAIで確認して購入して以上終了という、いわば“AIAIデザイン”の時代へ……?)。

AIにより筆者が制作。こんな未来も近いかもしれません。

AIにより筆者が制作。こんな未来も近いかもしれません。

人にもAIにもうれしい情報設計

ではそんなAIが検索・確認のフェーズも担いうる今後、最も重要なのは何でしょうか? それは、「AIの検索・表示結果に、どれだけ自社を取り上げてもらえるか」です 。

この手法は「GEO(生成エンジン最適化)」や「AIO(AI最適化)」などと呼ばれ、現在各社がしのぎを削っています。電通デジタルさんと共にこの分野のプロジェクトを重ねてきましたが、このジャンルは業種によって驚くほど対応法が異なります。

たとえば化粧品などの特定の分野では、「口コミ(レビュー)」の質と量をAIがかなり丁寧にチェックしていることが分かっています 。AIが特に参照しているあるメディアは、これまでのリーチ以上の媒体価値を持ち始めています。

今回のDoveの施策が素晴らしいのは、それを単なるGEO対策ではなく、集まったレビューをあえてリアルなポスターや映像に落とし込むことで 、AIに対しても、人間に対しても、「Doveらしいブランドの見え方」を貫いた点でしょう

Doveが掲げるパーパスは「Real Breauty(ありのままの美しさ)」 。嘘偽りのないリアルなレビューだけを発信するこのプロジェクトは 、AIの世界にとっても、それを見ている我々人間にとっても、非常に有効なブランディング施策となっています 。まさに、AIをステークホルダーと見立てた「AI-PR」と呼べる新しいアプローチかもしれません。

レポート第2弾は以上です。
最後となる第3弾では、来年のカンヌライオンズの予想をしてみたいと思います。

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嶋野裕介(しまの・ゆうすけ)

電通 zero クリエイティブディレクター

最近の仕事にNetflix「ガス人間、現る」、日本テレビ「ダブルインパクト」、サントリー角瓶「親子の答え合わせ」、Master’s Dream「麦の個性」、LIVE BOARD「ライブボーシ」など。漫画と研修とアイスクリームが好きです。


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