ハラスメントや不祥事が発覚した際、問題そのものだけでなく、その後の情報発信を誤ったことで、企業がメディアの格好の“餌食”となる事例が相次いでいる。フジテレビのドラマ『夫婦別姓刑事』を巡る問題でも、関係者との協議中に週刊文春が先行して報道。佐藤二朗と所属事務所が反論する中、フジテレビが7月7日に詳細な説明を公表すると、佐藤本人がXで再反論し、当事者間の認識の違いそのものが新たなニュースとなった。
2025年1月27日のフジテレビ会見
アステリア執行役員の長沼史宏氏が主催する広報勉強会@イフラボは7月14日、本件を題材に危機管理広報のあり方を学ぶ講座をオンラインで開催した。長沼氏は、フジテレビの対応をケーススタディーに、「報道価値を下げる」対メディア戦術を解説。前編では、報道を長期化させない初動と、メディアへの情報提供の方法を整理する。
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危機管理広報のゴールは「忘れ去られること」
不祥事が発生した際、企業はできるだけ多くの人に自社の主張を伝えようとしがちだ。しかし、危機管理広報の目的は注目を集めることではない。
重要なのは、報道をなるべく抑え、炎上期間を短くし、ブランドや企業価値へのダメージを最小限にとどめることだ。長沼氏は、「なるべく短期間で、その記憶から忘れ去られるように仕向けていく」ことが、危機管理広報の一つのゴールだと示した。
忘れられるために必要なのは、続報が出なくなり、メディアが取り上げなくなることである。SNSでの炎上もより短期間で終息させることもポイントだ。中途半端な謝罪や強烈な失言、当事者同士の反論合戦が生じれば、ニュースや炎上は長期化してしまう。
会見で発せられた特徴的な言葉や振る舞いが見出しとなり、何年後も繰り返し取り上げられることもある。長沼氏は、その典型例として、食材の産地偽装が発覚した船場吉兆(すでに廃業)の「ささやき女将」(2007年)、集団食中毒事件が発生した雪印乳業(当時)の社長による逆ギレ会見(2000年)、野々村竜太郎元兵庫県議の号泣会見(2014年)を挙げた。
