SFAに顧客情報は入っている。ログイン率も悪くないし、必須項目も埋まっている。それでも、収益にどのように寄与しているか明確ではなく、営業会議では「この案件、どうなってるんだ」という質問が飛ぶ。
Google Japanで営業統括部長、freeeで執行役員営業統括を務めたのち、Magic Momentを創業した村尾祐弥氏は「使われていることと、役に立っていることは別の話だ」と話す。AIエージェントが実務に入り始めた今、企業はSFAをどう「再構築」すべきかを聞いた。
管理のための道具に成り下がるSFA
Magic Moment創業前、村尾氏が所属していたGoogleやfreeeでは、SFAの活用は当たり前だった。データがなければグローバルの数字も上がらず、そのデータがエビデンスになって給料やボーナスも決まる。だから誰もが自然に記録していた。ギャップに気づいたのは、創業してからだ。
「ほとんどの会社がSFAツールを導入しているにもかかわらず、まったく使われていない。そもそも、顧客管理そのものをやっていないケースも見られました。高額なツールを導入しているのに役に立っていない。そんな状況があちこちで見られました」(村尾氏)
SFAが、営業担当者が上司に報告するための管理の道具に成り下がっていたのである。本来、商談で何が起きたか、顧客が何に困っているか、次にどんな価値を届けるべきかという情報は、経営の意思決定につながる。プロダクトを直すのか、サービスの条件を変えるのか、人員を割くのか。それらはすべて、現場が持つ顧客の事実によって決まるはずだった。
ところが実態は、案件名と確度〇%という営業担当者のさじ加減で入力された数字が積み上がっていくだけ。一番大切な情報は会話やメールの中に残ったままで、データとして捉えられていない。結果として売上予測は個人の経験と勘に依存し、マネージャーは入力の督促と事実確認に時間を使うことになる。
だからこそ、ツールの定着率を見て安心してはいけない。見るべきは、入力されたかどうかではなく、その記録が顧客との関係を次の判断に変えたか、行動に使われたかである。しかも日本には、そもそも入力すらされていないという、その手前の問題がある。
入力は、そもそも営業の仕事ではない
問題の根本はどこにあるのだろうか。UIやUXの使いにくさは一因ではあるが、根本ではないと村尾氏は言う。最大の問題は、そもそも営業担当者に入力させること自体にある。
営業の仕事は顧客と話し、ニーズを拾い、課題を抽出して価値を提案することだ。商談中は、相手の眉の動きや眉間のしわ、声色の変化まで捉えて勝負をしている。その営業にとって、商談後の転記作業は本線の外側にある行為でしかない。入力を面倒だと思うのは、仕方がないことなのだ。
