売れすぎといわれるほどに売れ、日経MJのヒット商品版付けで前頭にもなったJINS PC。そのヒットの構図は大ヒットしたトクホのコーラ「メッツコーラ」と似ている。
飲料の中核価値は、「喉を潤すこと」。それを「美味しさ」や「食事によく合う味わい」という実体価値で実現する。さらに、「ゼロカロリー」という付随機能で価値を高める。ところが、メタボを気にしてコーラの飲用習慣がなくなった層には、カロリーがなくなっても今さら「飲む理由」にはならない。そこで、メッツコーラは「脂肪吸着を防ぐ」という本来「付随的機能」である価値を中核に据えて訴求し、大ヒットをしたのである。
メガネの中核価値は「モノがよく見えるようになる」だ。実体価値は「フレームなどのデザイン」。付随機能は「レンズの傷が防止できるなどのコーティング」である。故に、視力が悪くない人やコンタクトレンズ使用者には無用の長物だ。当然、わざわざ「使用する理由」がない。ところが、JINS PCは中核価値を取り去り、付随機能だった「コーティングの技術」を中核に据えた。それが「PCの放つブルーライトから目を保護する」という新たな中核価値を生んだのだ。
では、うっとうしい花粉の季節を前に発売される、JINSの花粉防止用メガネについて考えてみたい。花粉防止用メガネの中核価値は「花粉をブロックすること」だ。だが、そうしたメガネは今までにも存在したが、重度の花粉症患者以外には使用されなかった。そこで、JINSは花粉防止用メガネを花粉対策という中核以上に、実体価値である「デザイン」を強調して、「花粉も防止できるオシャレなアイテム」として訴求すると思われる。つまり、中核価値と実体価値の逆転だ。今まで着用をためらっていた層や、比較的軽度な花粉症患者も「憂鬱な季節を楽しい気分で乗り切る」という「買う理由」を与えられて購入に踏み切るだろう。
金森努「あの商品、このサービスがヒットするワケ」バックナンバー
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