【前回】「牛乳石鹸「与えるもの」が示すWeb動画の新たな課題」はこちら
画像提供:123RF
広告やマーケティングの仕事をしている人のなかには、若い頃にミュージシャンや画家、作家を志した人が他の業界・職種より多い、という感覚があります。どちらも表現に関係する仕事ですし、それらの業界・職種では時にアーティストと仕事上の付き合いも発生するので、これは決して不思議なことではありません。
アイルランドの詩人でロバート・グレーヴスという人がいるのですが、自身で出版社を経営していた彼は、こんなことを言っています。作家になりたくて出版社に入る人は多いが、だとしても編集などをするより、事務だったり配送だったり、全く表現や創造に関係のない仕事をしたほうがいい。編集は、それはそれで高度に創造的な仕事なので、始めると表現や創造に対する欲求がそこで充足されてしまい、自らものを書くモチベーションがなくなってしまうのだ、と。
これは確かにあるな、と実感します。創造的でなくてはならないマーケターの端くれである筆者も、実は若い頃には無謀にもミュージシャンを目指したクチなのですが、今となっては楽器を手に取ることすらほぼありません。逆に学生の頃の音楽仲間で未だに音楽活動を続けている人は、一見表現や創造からはかけ離れた仕事をしていることが多いように思われます。これは表現に対する欲求を本職で充足して(しまって)いるかどうか、の違いなのかもしれません。