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アセアンの夫婦は家事シェア型が8割 — 博報堂生活総研アセアンがアセアン夫婦の役割分担について発表

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アセアンで暮らす生活者の新しいライフスタイル研究を目的に2014年、タイに設立した博報堂生活総合研究所アセアンは、「アセアン生活者フォーラム2017」で各国の家庭における夫婦の役割分担についての発表した。今回の調査からは家事・育児の分担スタイルと、購買行動の関係について、興味深い結果が出てきた。その発表内容とそこから見えてきた今後のマーケティングのポイントについて、博報堂生活総合研究所アセアン所長の帆刈吾郎氏が解説する。

博報堂生活総合研究所アセアン 所長 帆刈 吾郎(ほかり・ごろう)氏

1995年 博報堂入社以来、一貫してマーケティングに従事。大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などの統合マーケティング、商品開発などのプロジェクトを多数手掛ける。2013年11月よりタイ・バンコク駐在。2014年3月より現職。

 

アセアンの男女平等意識の実態は?

近年、ジェンダーイコーリティ、いわゆる男女平等への社会的注目が高まっています。男女平等というと、政治、教育、職場など様々な観点があるのですが、博報堂生活総合研究所アセアン(以下、生活総研アセアン)としては、男女平等に関連する最も身近なテーマとして、アセアンの家庭内での男女平等に着目して研究を行いました。

世界経済フォーラムが男女平等の状況を国別にランキング化するグローバルジェンダーギャップレポート2017によると、世界144カ国中、トップ3はアイスランド、ノルウェー、フィンランドと北欧諸国が占め、アセアンに属する主要5カ国では、シンガポールが65位、ベトナムが69位、タイが75位、インドネシアが84位、マレーシアが104位とやや下位に位置づけられていることがわかります(ちなみに日本はさらに下位の114位です)。

では、アセアン家庭での男女平等意識の状況はどうなっているのでしょうか?

生活総研アセアンでは、独自の定量調査を実施。「あなたの家庭では夫婦どちらが力を握っていますか?」という質問を行ったところ、アセアン5カ国計では夫42%、夫婦平等54%、妻5%でした。国別では、タイ(夫18:夫婦平等72:妻10)、シンガポール(夫32:夫婦平等61:妻8)は夫婦平等という回答が多く、マレーシア(夫57:夫婦平等39:妻4)、ベトナム(夫54:夫婦平等45:妻1)、インドネシア(夫50:夫婦平等48:妻2)はやや夫が力を握っているという回答が多くなりました。

ちなみに日本のスコアは、内閣府男女共同参画社会に関する世論調査(平成28年)によると、家庭生活での男女の地位の平等感は「男性が優遇」43%、「男女平等」47%、「女性が優遇」7%(わからない2%)となっています。厳密に同じ質問ではありませんが、日本の状況はタイ、シンガポールよりは平等感は低く、ベトナム、インドネシアに近い意識と捉えられるかもしれません。

このように、アセアン主要5カ国での男女平等意識は、国によっては男性優位がやや主流だったり、男女平等が主流だったりという状況にあることがわかります。では、実際の家事や育児などの役割分担の状況は、どうなっているのでしょうか?

男が外で働き、女が家事育児をする伝統スタイルは少数派

男女の平等感に関する質問とは別に、実際の役割分担がどうなっているかについて、夫婦の役割分担を4つのタイプに分け、どのタイプに最も近いか質問したところ、次のような結果になりました。

1.男は外で働き、女は家庭を守る役割分担
 (トラディショナルタイプ) 約23%
2.家事や子育てなどの役割分担をタスクごとに夫婦で平等に分担 
 (タスクベースシェアリングタイプ)約51%
3.家事や子育てなどの役割分担を時間のある人が柔軟に担当する 
 (フレキシブルシェアリングタイプ) 約25%
4.伝統的家族から役割が逆転し、女が外で働き、男が家庭を守る役割分担 
 (スイッチタイプ) 約2%

このように、タスクベースシェアリングタイプとフレキシブルシェアリングタイプを合わせると、夫婦で家事や育児をシェアするタイプは約76%にのぼり、アセアン家庭の実態として夫婦で家事や子育てを平等に役割分担している世帯が、既に過半数を占めていることが分かります。

さらに、どのタイプが自分たちの現状の役割分担に満足しているのかについて比較したところ、下記のように役割分担の満足度が出ました。

役割分担の満足度(100点満点として)
1. トラディショナルタイプ  平均72点(夫82点: 妻64点)
2. タスクベースシェアリングタイプ 平均87点(夫90点: 妻83点)
3. フレキシブルシェアリングタイプ 平均74点(夫83点: 妻68点)
4. スイッチタイプ 平均65点(夫73点: 妻55点)

タスクベースシェアリングタイプが、最も満足度が高くなっています。どのタイプも夫側の満足度が妻より高いのが特徴的ですが、タスクベースシェアリングタイプは夫と妻の満足度ギャップが小さいのが特徴です。

次いで時間のある方が分担するフレキシブルシェアリングタイプ。事前には、もう少し点数が高いのではないかと想定していましたが、妻側の満足度がさほど高くない結果になっています。この理由のひとつには、心がけとしての男女平等意識、役割分担意識は高いのですが、実際の行動となると、時間がある方が柔軟に行うという分担になるため、実態は妻の負担が多くなってしまうという現実があるようです。

次ページ 「夫婦という単位をターゲットとして設定という新視点」へ続く