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コラム

パーソナライゼーション時代-メディア企業のマーケティング戦略

世界で起きるメディア環境の変化を4つの視点で読み解く(前編)

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©123RF

伝統的なメディア企業のマスモデルは、このまま未来永劫、続くのか?

昨今、マーケティングの世界ではパーソナライゼーションの話題で盛り上がっている。企業がパーソナライゼーションに向かう中、マスへのアプローチを事業の根幹としてきた放送局、新聞社や出版社などの伝統的メディアはいま、どのようなマーケティング戦略をとるべきなのか。このコラムでは全7回で、その戦略について解説していく。

私が現在、所属するPwC Japanグループでは昨年「グローバルエンタテイメント&メディアアウトルック 2018-2022 日本企業への示唆」の中で、エンターテイメント業界とメディア業界を巻き込んだ「コンバージェンス(融合)」が起こりつつあるという大きなうねりを提示した。テレコム業界がメディアに進出するために兆円単位のM&Aや事業投資を行ったり、良質なプレミアムコンテンツ獲得のために巨大なM&Aを実行するエンタメ企業が現れたりと、非常に規模の大きい、影響力の大きな動きが始まっているという報告であり、それに備えるためのいくつかの示唆を提示させていただいた。

この融合の原動力になっている要因としては、

・消費者がネットと常時接続される環境になったこと
・データアナリティクス技術の発達で消費者の行動が可視化されてきたこと
・モバイルデバイスがほぼ世の中にいきわたってそれが最優先メディアとなったこと(残念ながらTVではなくなった!)
・メディア企業と競合になるビジネスモデルをプラットフォーマーといわれるプレイヤーが獲得したこと

などがあげられる。

これらの原動力により必然的に起こってくる動きが、個人ごとに好みや嗜好を最適化するサービス、つまり「パーソナライゼーション」である。ECサイトの個人へのリコメンデーションはすでに定着し、OTT(オンライン動画視聴サービス)は個人の嗜好を判断して好みのコンテンツを提示する、ポータルサイト閲覧時に表示される広告はすでに個人ごとに異なる。挙げればきりがないほどに「パーソナライゼーション」は世の中に浸透・定着しつつある。

しかし、日本の伝統的なメディア企業に目を転じると、一部でこのパーソナライゼーションへの対応の動きは始まっているものの、まだまだ従来のマスを対象としたビジネスモデルが標準モデルとして君臨している。言い換えれば、この伝統的モデルでまだ儲かる構造を維持しているということだ。しかし、あえて問う。

この伝統的なマスモデルがこのまま永遠に続くのだろうか。もちろん、急に今のビジネスモデルが崩壊することはないが、消費者が求めている大きなうねりを正しく分析し、日本にあるべき新たなビジネスモデルを模索する必要性はますます強まっていくはずである。「パーソナライゼーション」というキーワードが持っている可能性とリスクを明示し、日本のメディア企業が独自の発展を遂げることができるよう、いくつかの示唆をこのコラムを通じてさせていただきたい。

次ページ 「パーソナライゼーション時代にメディアがとるべきマーケティング戦略」へ続く