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ビッグテックを前提としたマーケターと消費者の新しい関係づくり

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【前回】「人は人とつながりたい コロナ禍で成長したメディアの共通点」はこちら

米テキサス州オースティンで開催される、テクノロジーとクリエイティブの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト」。ことしはコロナ禍のあおりを受け、3月16日〜20日にかけてオンラインで開催されました。数多くのセッションの中から、アビーム・コンサルティングの本間充氏がマーケターの視点から、「これは!」と感じたものをレポートします。

技術者ではなく政治家や行政による議論

前回に続いて、SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)のカンファレンスから、皆さんも注目のセッションを一つご報告します。「Forging a New Social Contract for Big Tech」というセッションで、直訳すると、「ビッグテックに対する新しい社会契約の構築」ということになるでしょうか。ここでのビッグテックとは、いわゆるGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれる巨大IT企業を指します。

日本では、このテーマに関して、CookieというWebブラウザーを追跡する技術についての議論がすぐに浮かびますが、このセッションではもっと広範囲で、「民主主義と新しい技術」「プライバシーとデータ」「Integrity and dignity(誠実さと尊厳)」など、議論が本当に多岐にわたりました。つまり、新しい技術は私たちの思っている以上に生活に影響を及ぼしているため、私たちが理解と議論すべきテーマは、とても広いということです。

このパネルディスカッションの登壇者も、とても豪華でした。EU委員会からMargrethe Vestagerさん、デンマーク外務省から、Anne Marie Engtoft Larsenさん、アメリカ上院議員のAmy Klobuchar上院議員が、パネリストとして名を連ねました。

私が驚いたことのひとつは、プライバシーのような複雑な問題について、技術者ではなく政治家や行政の担当者が丁寧に議論していた点です。これは、いま起きている一部のインターネット企業の寡占状態や、個人情報の扱いが、政治問題であることの証左でもあります。法整備が技術に追いついていない部分もありますが、日本でもちょうどこの原稿をまとめているさなかに、経産省による巨大IT企業の規制が本格的に始まりました。これからさらに、ビッグテックに関する議論が活発になるのでしょう。

世界の問題

図1 米国国会議事堂(筆者撮影)
SXSWは、アメリカ・テキサス州オースティンで開催されていることもあり、2021年1月6日に起きた、アメリカの国会議事堂襲撃事件の件は、避けて通れないテーマだったようです。

このセッションでも、事件を誘発したとされるSNS——報道ではParlerとされていますが——は何だったのか。そして、インターネット上の多くの情報は真偽不明のまま流通しているとわかったこと。さらに、ネットユーザーが情報を探すときに使う検索エンジンが寡占状態にあることなど、この事件の背景には多くの問題があることについて話題が及びました。

政治は、産業革命にいつも遅れ、追いつこうとしてきたことは歴史が示しています。つまり第一次産業革命や、第二次産業革命と、インターネットのような技術の登場は同じことなのです。視野を広げて過去に目を向ければ、対応のヒントはあるはず。その上で、私たちにできることは何でしょうか。EU委員会のMargrethe Vestagerさんは、「政治や制度が、ビッグテックによって起きていることに追いつく『速度』が重要だ」と指摘します。

次ページ 「「自分ごと化」してみる」へ続く