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コラム

PRガール

「DNAに刻まれた会社のカルチャー」

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日曜の午前1時。
草木も眠るこの時間…
人間・伊藤はクローゼットの前で悶絶していました。

「お……お洋服が…無い…」

そう。新しい会社で、就業規則などの説明を受けたとき、
私はみつけてしまったのです。

「ビジネスの場で違和感の無い常識的な服装」
という一文。

コピーライター時代、服装はスーパーフリーでした。
アフロの先輩も金髪の先輩もいた。
年がら年中ノーネクタイさ、ベイビー…
クリエーティブ局は服装もクリエーティブ!フォー!!
…なんて言うのは冗談ですが
ジーパンでのプレゼンも許されていたのは事実。
(※クライアントによってはNG)

もちろん基本はスーツですが、
服装が自由の部署も多々あり、クリエーティブ局はその筆頭。

そんなわけで私のクローゼットは、
違和感という名の個性で彩られていた。
スーツなんて全て実家ですバカヤロウ、私のバカヤロウ。

住民票、年金手帳、新しく開設した銀行口座の通帳…
入社に必要な物は、全て揃えたと思っていたのに、
洋服!!!ああ1ミクロンも頭をよぎらなかった。
完全に盲点。

私に残された道はただひとつ。
この状況をツイッターにつぶやくことのみ。
別に何の解決にもならないが、気休めなう…。

つぶやきその1:
「新しい会社には
『ビジネスの場で違和感の無い常識的な服装』
をしていかねばならないのだけれど、
スーパーカジュアル無法地帯・
違和感上等ワールドから来た私のクローゼットの
オフィスカジュアル的お洋服は3日目にして底をつき、
午前1時にうろたえる私炭酸水ヤケのみ一気。誰かお洋服ください。」

つぶやきその2:
「こんにちは、常識。こんにちは、世の中。」

つぶやきその3:
「週末はCLASSYという教科書をもって、
アトレでお洋服を調達しまSHOW。そうしましょう。」

前の会社の先輩が

「分かるわー。
17年も会社にいて喪服しかスーツ持ってないもの。
ちゃんとしたヒールもないわー」
と返事をくれた。

ですよね先輩…。
でもどうやらそれって、一般的には A・RI・E・NA・I。

ひとしきり悶絶した後、無難なワンピースを選び取り、就寝。
それにしても、前の会社のカルチャーって
思った以上に自分に染みていたのだな。

新しい職場は、びっくりの連続。

たとえばスケジュール管理。
トレンダーズではサイボウズを使っています。
誰が今どこで何をやっているか丸わかり!!
隣の席の人の担当クライアント・外出先など諸々、
本人に聞かないとわからない前の会社とは大違い。

それから、メールの作法。
前の会社では、社内でもメール時の敬称は「様」だった。
そしたら「社内で様とか、堅苦しいんで
さんづけにしてください!」って言われちゃった。
そうなのか。ここではそうなのか。

夜の会合のお礼メールも、
前は、最初に送った人のメールにかぶせて全返信していたのだけど、
私以外のみんなは「お礼」ってタイトルつけて、独立したメールにしてる。
小さいことがいちいち全部カルチャーショーーック!

スピードも速いです。
ボディコピー的なものを、頼まれた。
「締め切りいつですか」
「明日」
…ボディコピーですよね!?

「メルマガお願い」
「えーっと、どんなこと書きましょうか」
「自由。任すわ!」
…オリエン無し!!

こ…これがベンチャーなのね。
しかし、そのスピード感は、
中に入ってみれば案外気持ちよいのでした。

…という心境を、前職の時から仲良くして下さっている
プロダクションの方に、ランチしながら話していたら、
「フフフ…こちらの世界にようこそ」と。

「クライアントが違うと全然ルールも違うよねー。
遅刻厳禁っていうクライアントがいてさ、
大阪で打ち合わせがあって、
新幹線が雪で止まって遅れたらめっちゃ怒られたわ」

え、でも大阪なんて新幹線以外の交通手段、無いし。
それ、自分のせいじゃなくないですか?
雪なんて予測できないわけだし。

「うん。でも、怒られた。そういう会社もあるんだよ」

わー、今まで私、恵まれてたのかな。
世の中って広い。私の視野、狭い。

そんなことを思いつつ、会社に戻ると、
私の席に紙袋がチョコンとのってるよ?

オヨヨ?これは何?

「はあちゅう、『誰かお洋服ください』って言ってたじゃない?
古着で良かったら使ってくださいって

…社長から。」

シャ…シャチョー!!?
かたじけないにも程があるんですケドッ!!!

その日の夜、仲良しに電話。
「あのさ、社長がお洋服くれた」

「お前、何PRしてんだ」

私もそう思う。

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