AKQAレイ・イナモト「MADE BY JAPAN」最終回―「The Next Generation」(後篇)

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文:AKQAチーフ・クリエイティブ・オフィサー レイ・イナモト

世界を舞台に活躍するレイ・イナモトさんが考える日本の強さとは。日本のコミュニケーションビジネスの今、そしてこれからを考える全4回の短期連載の最終回です。(本記事は、「宣伝会議」2012年1月15日発売号に掲載されたものです)

【AKQAレイ・イナモト「MADE BY JAPAN」最終回―「The Next Generation」】前篇はこちら

360から365への進化

ここ10年ほど、「360度のコミュニケーション」という提唱がこの業界では唱えられてきた。そして、トラディショナルな広告代理店、デジタル・エージェンシー、双方から「360度」を提案できるエージェンシーになろうという動きが顕著に出ていた。

ただ、僕は今後「360度」という考えは、あまり大切ではなくなっていくと思っている。これから大切なのは、この数に5つ足した「365」だと思っているからだ。「365」とは「365日」のことである。つまりこの業界は「360度のコミュニケーション」から「365日のコネクション」に進化する必要があると思っている。

「コミュニケーション」をつくるというのは大切なことだと思う。ただそれ以上に大切なのは「なぜか」ということ。その目的がブランドと顧客、消費者との間に365日間の「コネクション」をつくることだと最近、考えている。

「コネクション」をつくるのであれば、出すアイデアは映像でもソフトウェアでもサービス、そして下手したらサンドイッチでも良いわけだ。では、どういうアイデアが「365」なアイデアなのか?いくつか例を挙げてみる。

1.Heineken Star Player

手前味噌になってしまうが、これは当社のクライアント、ハイネッケンのために発表したサッカーのゲームをテレビと携帯電話、もしくはフェイスブックでリアルタイムに共有体験ができるというシステムだ。今までハイネッケンはスポンサーとしてテレビなどの普通の枠に広告を出すことしか、していなかった。しかし、こういうカタチの体験を提供できると、ブランドのメッセージを一方的に流すのではなく、消費者のためになる体験として長期的に提供できるようになる。

2.Red Bull Signature Series

レッドブルはここ10余年で確実な成長をしてきたオーストリアのブランド。ほとんどテレビや印刷の一般的な広告を使わない会社だ。「Red Bull Music Academy」という世界をツアーする音楽祭を主催したり、2011年12月にはアメリカのテレビネットワークNBCと提携し「Red Bull Signature Series」というテレビ番組の共同制作を発表するなど、イベントやコンテンツにマーケティングの努力を費やしている。360度のコミュニケーションにほとんどこだわらず、どういった体験を消費者に提供できるかを重視した「365」なスタンスと言えるだろう。

3.Curators of SWEDEN

次に紹介するのはスウェーデン観光局が観光客誘致のためについ最近始めたものだ。

「@sweden」のツイッターのアカウントを使い、毎週一般市民一人ひとりが「キュレーター」となってメッセージを出していくという、いかにもサイバー大国スウェーデンらしいアイデアだ。シンプルで長く持続できる活動と言える。

日本からもこういった世界に目を向けたアイデアがもっと出ると良いと思う。この業界にすでにいる方たち、そして入るかもしれない若者たちは、今後「広告」をつくるという概念よりも日本が世界とどうつながっていけるかを課題にすると少し見方が変わるのではないだろうか。日本、そして世界の歴史の中でもかなり特別な意味を持つことになった2011年。そしてかつての車や電気製品などの製造業は韓国、台湾などに奪われてしまったという嫌でも否定できない事実。そんな中、日本と世界の間の「コネクション」をつくるというのは、これまで以上に大切なことになっていると思う。

アイデア、企画を出す際、 クライアントの要望に沿っているか、結果が出るかを考えるのが、大切なのは言うまでもないことだ。そうした中でも常に「これは世界に通用するか」と問いかけることも今後大事になってくると思う。

日本でつくられたものが「Made in Japan」で終わらず世界に通用する「Made by Japan」になるように。

最後に。これまで4回に渡り「Made by Japan─世界に通用する日本の未来」というテーマで書いてきましたがこれが最終回です。僕の勝手な偏見とつたない文章を寛大に読んで頂き、お礼そしてお詫びを申し上げます。

また「宣伝会議」誌上で、もしくは実際に直接多くのみなさまとお会いできれば嬉しいなと思います。

Thank you for your support& see you again.

AKQAレイ・イナモト「MADE BY JAPAN」バックナンバー

レイ・イナモト(稲本零)
英Creativity誌「世界の最も影響のある50人」の1人にも選ばれた、世界を舞台に活躍するクリエイティブ・ディレクター。R/GA、Tronic Studioなどを経て、2004年10月、欧米大手デジタル・エージェンシーAKQAにグローバル・クリエイティブ・ディレクターとして入社 。2008年にはチーフ・クリエイティブ・オフィサーに昇進。2010年には日本人として初めてカンヌ国際広告祭チタニウム・インテグレーテッド部門の審査員に抜擢されるなど、「広告業界のイチロー」とも呼ばれている。

『宣伝会議』2012年1月15日号
 巻頭特集:各社のソーシャルメディア活用100事例も紹介! 成果のあったWEB企画 仕掛けた100人
この1年で企業のWEBマーケティングはますます進化を遂げ、ツイッター、フェイスブックなどソーシャルメディアの活用は定番化しつつある。今回の特集では、その中でも話題を集め、成果を出した100社のソーシャルメディア活用事例を一挙に紹介。

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