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コラム

i(アイ)トレンド

五輪アスリートも活用を始める「個人メディア」の価値とは

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ネットを通じて活動資金を募る

ロンドンオリンピックまであと100日を切り、代表選手も決まり始めているが、オリンピックアスリートの活動費の事情は決して楽ではないようだ。これまでも世界の各国で、オーストラリアのサッカー女子代表チームや、ドイツの女子バレーボールチーム、スペインのハンドボールチームやサッカーチームがカレンダーの販売などで資金集めを行ってきた。日本でもパラリンピックの陸上200メートルに出場する中西麻耶選手が活動資金を捻出するためにカレンダーをAmazonで発売している。

また、ロンドンオリンピックの男子マラソンの代表に決定した藤原新選手は自身のマネジメント会社を設立し、ニコニコ動画の施策を通じて1000万円の活動資金を集めたという。

この取り組みは、藤原選手を支援したいニコニコ動画のユーザーが先着2万人でニコニコ動画プレミアム料金(月額525円)をスポンサーとして貢献するという仕組みである。藤原選手に貢献したユーザーはそのままプレミアム会員の特典を享受することができる。企業が仲介しているとはいえこのような仕組みで個人がアスリートの支援ができるような仕組みができてきている。

アスリート以外でも、個人がその発信力を生かして収益を上げるケースとしては、有料メールマガジンを活用している例が多いようだ。全体的な規模などは公表されていないのでわからないが、代表的な有料メルマガのとしては「まぐまぐ!」や「BLOGOS」などが挙げられるであろう。 メルマガは色々パターンがあるものの、週1回程度発行され、1カ月500~800円程度の購読料が課金されるが、中には投資情報などで1万円近くとるものも存在している。有料メルマガを発行している人はタレントから一般人に近いある分野の専門家までさまざまで、中にはほぼ毎日発行している人もいるようである。

有名なところでは堀江貴文氏のメルマガ「堀江貴文のブログで言えない話」は1万人を超える購読者がいて、年間の売り上げが1億円に達すると言われている。ジャーナリスト津田大介氏は政治メディアを立ち上げるための収入源として有料メルマガ「津田大介の『メディアの現場』」を立ち上げたということである。そのほかにもジャーナリストの池田信夫氏や ラジオ番組と連動するメルマガを始めた小島慶子氏など、静かにだが確実に浸透している。

有料メルマガは「ファンクラブ」

有料のメルマガの収益率は非常に高い。本の印税が10%くらいであるとするとメルマガの著者への収入は80%程度にも上る。これは、決済を仲介する側も決済手数料やメルマガの紹介以外の原価がかからないからである。本を出版する場合には印刷費用、流通費用のほかに売れ残る返品リスクつまり在庫のリスクがある。電子データのみであるメルマガは原価も在庫も無いので利益率の高い構造を作ることが比較的容易であるといえよう。そして、この高収益性がメルマガの発行者の活動や生活を支えるひとつの原資となっている。つまり、誰でもが簡単に収益力の高いメディアを持つことが比較的容易であり、また誰でもが簡単にその人のスポンサーになることができるのである。本当にその人の活動に賛同している人がいれば、お礼と報告だけのメルマガでもお金を払う人はいるのではないかと考えられる。

筆者の考えでは有料メルマガはファンクラブに似た構造であると考えている。というのもある人の情報に共感や信頼性さらに付加価値がある場合には、お金を出してもそれを購入するのである。ファンクラブも特定の人やグループの情報を得るために、メルマガや情報誌が定期的に送られてきて、限定グッズや先行発売を可能にしている。メルマガもそこでしか入手できない情報やメルマガによっては寄せられた質問に答えてゆくということも行っている。

このようにアスリート、著名人やその道の専門家が自ら収益基盤を確立できるようになったことはインターネットという開かれた基盤の上に様々なサービスが展開されてきているからである。特にソーシャルメディアを活用した個人をサポートする基盤は今後も広がってゆくのではないかと感じている。4年後のオリンピックのときにどのような状況になっているかが今から楽しみである。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー

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