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インドネシアの大手製紙会社APP、オランウータン保護活動に本腰

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地方教育プログラムでオランウータンの狩猟・殺害・捕獲の厳格な禁止を強調

アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)は、従業員、関連会社、パルプ材供給会社を対象に、絶滅危惧種の保全に関する包括的な教育プログラムを開始した。まず、重点を置くのはアンブレラ・スピーシーズ(傘の種)と言われ、インドネシアの生態系の頂点に位置するオランウータンの保護。同社は、このプログラムを「生物多様性を保護しながら持続可能な原料を利用する持続可能性ロードマップの重要な柱」としている。

APPは、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)をはじめとする環境団体から、原生林の伐採をするなど自然環境を破壊していると指摘されていた。そこでRAN は2009年より、インドネシア森林保護キャンペーンを開始し、問題の解決のためのダイアローグなどを続けてきた。

今回のプログラムは、こうした問題に対応する企業姿勢を示すものとみられる。内容は、2011年11月に発表されたオランウータン基金インターナショナル(OFI)との2年間の“オランウータンの友達”パートナーシップに基づくもの。野生で生まれた後に捕獲されたオランウータン40頭を自然の生息域に戻すことと、中部カリマンタンのパンカランブンにあるOFIの動物愛護センターで飼育されているオランウータン330頭が快適に暮らせるよう世話をするための支援を目的としている。

OFI_orangutan

オランウータン基金インターナショナル(OFI)は野生のオランウータンとその熱帯雨林内の生息域の保護に取組んでいる非営利団体。OFIではタンジュン・プティン国立公園内にあるオランウータンの調査地区キャンプ・リーキーを運営している。パンカランブン付近のパシル・パニャン、ダヤク村にある、住むところを失ったオランウータン330頭が暮らしているオランウータン愛護センター及び検疫所(OCCQ)の施設を運営している。さらに、ラマンダウ野生生物保護区の管理を支援し、野性で生まれてその後捕獲されたオランウータンを訓練し、野生に戻している。こうした現地プログラムを通じ、OFIは200人以上の地元のインドネシア人を雇用している。

基本原則は、狩猟・殺害・捕獲の禁止。オランウータンの自然の生息域やその周辺に暮らし働く人々に、絶滅危惧種を保護するためのベストプラクティスについて教育する。また絶滅危惧動物を傷つけることを一切容認しない(ゼロトレランス)というAPPの政策も強化する。

アニマル・パスウェイを構築し、保全地域間のオランウータンの移動を助ける

APPのパルプ材供給会社に向けた教育は今週から始まり、まず研修生30名が中部カリマンタンのパンカランブンで集中的な6日間の教育コースを受講する。この30名が、今後9カ月間で270名のスタッフを教育する。

東カリマンタンのパルプ材供給会社のスリヤ・フタニ・ジャヤ(SRH)とスマリンド・フタニ・ジャヤ(SHJ)と緊密に協力してクタイ国立公園に野生生物回廊(アニマル・パスウェイ)を構築しているカリマンタン州で実施する。これにより東カリマンタンにあるいくつかの保全地域間でのオランウータンの移動を改善する。生物にとって森の中を自由に移動できることは餌や通婚にとって重要だ。河川や道路によって森を自由に移動できなくなると遺伝子の劣化が進み、絶滅のリスクが高まる。オランウータンのように個体数が減っている絶滅危惧種では事態がより深刻だ。

今回のプログラムにより、これらの問題の改善に期待が寄せられる。OFIのガルディカス博士は、「森林や材木から利益を得ている林業部門は、特に責任ある行動をとる義務があります。我々は、パートナーであるスマート社とAPPによる支援に感謝しています。OFIの教育プログラムを開始することは、インドネシアの森林で働く人々にオランウータンの保全と保護に関して教育する戦略の重要部分です。オランウータンだけでなく、その他の絶滅危惧種も対象とするこの種の取組みが増えれば、さらに素晴らしいことです」と生態系の保全の重要性を語った。

また、APPの持続可能性・ステークホルダー担当役員のアイダ・グリーンベリーは次のように述べている。

「活動を前進させるためにはチームによる取組みが必須です。そのため、我々は2010年以来、クタイ国立公園の野生生物回廊の強化に向けて供給会社と協力してきました。その過程で多くの課題に直面しましたが、そのことでOFIのような世界的リーダーとの今回の協力関係の中心にいることの意義が高まりました。協調的なアプローチは、オランウータンの保護のような重要な問題に対処する唯一の方法です」

APP

アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)は、インドネシアに本社を置き、120カ国以上の国々でその製品を販売している。生産設備の大部分はLEIとPEFCによるCoC(加工・流通過程)認証を取得。スマトラ島のリアウ州にある17万8,000haのギアム・シアク・ケチル-ブキット・バツ生物圏保護区、同じく10万6,000haのセネピス・トラ保護区、カリマンタンのクタイ・オランウータン・プログラム、ウジュン・クロン国立公園でのジャワサイ保護活動を含む様々な保護活動に取組む。

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