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コラム

伊藤洋介の「こうすればよかったんだぁ」

商品とタレントがWin-WinになるCM

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前回からの続きです。

コンテを決めるのが先か?タレントを決めるのが先か?
この問題については議論の分かれるところだと思います。

宣伝部在籍中、僕は後者の手順を採用していました。
商品のターゲット、訴求ポイントが明確になった時点でまずタレントを選定し、その上でコンテ作りのためのオリエンを広告代理店に対して実施していたのです。

とある芸能プロダクションの方によれば、「このコンテでやっていただけるなら、契約させてもらいます」と広告代理店やキャスティング会社からもちかけられるケースは結構あるようです。
うーん……。
僕は、正直、この話には違和感を持たざるを得ません。
制作者側が、タレントをCMを作り上げる上での意志のないコマの一つとしかみなしていないことが明らかだからです。
自分たちの思うがままに演じてもらえばいいと、最初からタレントの力を見くびっているとしか思えません。
全く何様だと言いたくなります。

親戚の子供のリュウとタケ。目の中に入れても痛くないっす。

タレントは日々、さまざまなメディアの中で戦っています。その戦いは過酷で、そこに触れた人々から一定の支持を得られ続ける必要があって、成し得なければある日突然、その居場所を失ってしまうことだって、あり得るのです。代わりはいくらでもいるのですから、仕方ありません。

結果、彼らの多くは、一般に何をすれば受け入れられ、何をすれば拒否されるかを感覚で理解しています。とりわけテレビに活躍の場を求めている人は、その傾向が顕著でしょう。翌朝には、視聴率という形で成績が発表されるのですから、自然とその感覚が研ぎ澄まされていくのです。要は広告代理店にいる優秀なマーケターにも決して引けをとらないほど、今の世の中の匂いを感知しているってことです。

そんな彼らの力を利用させてもらわない手はないと僕は思います。
但し彼らはCMについてはプロじゃないので、あくまで主導権は制作者側がきっちりと握った上で、です。

「○○はコンテにうるさいから、使いにくい」なんて話をよく耳にします。
当たり前だと思います。
出演する番組や映画と同様に、そのCMの仕上がりが彼らの今後に少なからず影響を与えるからです。

でも、ここが肝心なのですが、タレントだってCMに出演する限りはその商品が売れてほしいと願っているということです。
異論のある方もいらっしゃるでしょうが、僕的には確信があります。商品が売れれば継続的に起用されることになり、結果自身のキャラクターをお茶の間に一層浸透できる上に、懐だって潤うからです。
したがって、一見わがままにしかない見えない注文も、そのCMをひいては商品を思ってのことだったりするのです。

タレント広告においては、その商品とタレントがWin-Winになるべきだというのが僕の持論です。
その辺をどうも勘違いして、「大金を払って、使ってやっている。だからこちらの言うことを聞くべきだ」という感覚でタレントを見ているクライアントも含めた制作サイドが、多い気がしてなりません。

CM作りのプロであるクリエイターのセンスと大衆をひきつける能力に長けたタレントの感性が融合したCMは必ずや視聴者の心を揺さぶるはずです。
前回も触れましたが、せっかく安くないお金を捻出し、タレント広告を作るのですから、彼らをとことん味方にして、一緒に作り上げるくらいの気構えが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。

伊藤 洋介『伊藤洋介の「こうすればよかったんだぁ」』バックナンバー